10万円と引き換えに同居
義父母の家の居間にいると、またテレビで「老後2,000万円」の話題が始まった。
最近毎日のようにこの話題ばかりでは?
見れば気になる、知れば落ち込む。
だからこのニュースが始まるとテレビを消してしまいたくなる。
本当は私のような引きこもりでサボっている主婦は、最も気にするべき話題なのだろうが、現実逃避したい私にはこの話題はストレスでしかない。
だが義父母の家で勝手にテレビを消す訳にもいかず、私が黙っていると、義母が言った。
「2,000万だなんて、これからの若い人達は大変ね。私達は普通に年金を受け取れる時代で良かったわ」
確かに羨ましい。
私達の親世代はこんな心配はしなくて済んだ。
既に年金を受け取っているが、少ないながらも生活に困るという程ではない。
私は義母に言った。
「そうですよ。だから私も本当はもっと働くべきなんですけどね」
そんなつもりは無いくせに、義母の前では介護から逃れる為に金がないアピールをする。
すると義母が言った。
「ころりさんが働くぐらいなら、同居した方がずっと節約でしょ」
……また同居。どこがどうなって年金不足の話が同居に結び付くのか。
だが義母は生き生きした目で言った。
「だって同居すれば光熱費とか食費とか節約になるでしょう?家の維持費も一軒分で済むし、ころりさんのここまで来るガソリン代もいらないし」
義母の言う通り、同居は最大の節約になるのかもしれない。
光熱費や食費以外にも家電や家具、何もかもを共同で使用するのだから。
一瞬私は返す言葉が見つからず黙っていると、義母は、
「そうでしょう?一緒に住めば月に10万円ぐらい軽く節約出来るわよ。そして私達もお世話して貰えるんだから一石二鳥ね」
と言って嬉しそうに笑った。
そうかもしれない。
節約や貯蓄を少しでも増やす事だけを考えれば同居は良い選択肢なのだろう。
だけど私はたとえ10万円貰って同居するより、貧乏なまま自由でいたい。
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