反応の弱いドライブスルー
夫が早めに帰宅した。
私が慌てて夕食を作ろうとすると、「今日はハンバーガーにしない?」と、夫が言い始めた。
夫は元々ジャンクフードが好きだ。
多分結婚していなければ、一人でずっとジャンクフードばかり食べるタイプ。
一方私はあまりジャンクフードが好きではない為、夫から言われなければ食べる機会は少ない。
だが夫が食べたいと言うし、私もそれで楽が出来るなら…と、買いに行く事になった。
私達は夜に店舗で食事をする事はない。
出来るだけ愛犬に留守番をさせたくない為、可能な限り持ち帰りを利用する。
今日も私一人でハンバーガー店のドライブスルーに向かった。
店に着くと意外と混んでいて、ドライブスルーもしばらく並んだ。
皆注文が多いのか、進むのが遅い。
ようやく私の番になり、私が一つずつ注文を始めると、マイクの向こうの返答が弱い。
あれ?聞こえてる?
と思うぐらい、返事が無い。しばらく沈黙の後、「えぇっと、もう一度言って頂けますか?」と言われ、何度も繰り返し同じ注文をし、一つ注文する度に相手が沈黙になるので、その度に聞こえているのかどうか心配になった。
こんなに手際が悪いドライブスルーは初めてだ。
そして注文が終わり、会計の場所まで移動すると、端切れの良い口調の若い女性店員が、「お待たせしました!」と笑顔で迎えてくれた。
そうそう、これこれ。
ハンバーガー店と言えばこの雰囲気。
と、ふと見ると、若い女性の隣に高齢の女性店員がいた。
かなり高齢に見える。60代以上なのは確実だろう。猫背で歩く姿もトボトボという感じで動きが遅い。
もしや先程の注文対応はこの高齢店員だったのでは…。
そしてその高齢店員はドリンクを用意し始めた。
やはり動きが遅い。そしてまだ不慣れな様子で周囲をキョロキョロと見渡しながら作業している。
その時、若い店員が高齢店員に向かって注意した。
「そのカップじゃないです!あ、違う違う!あ~~っ!もういいです!変わって!」
若い店員は怒った表情で高齢店員を押しのけ、手際よく作業していた。
私から見える範囲には、その二人以外にもあと一人若い店員がいて、正直なところ若者二人だけが動いているように見えた。
高齢店員はまるで足に根が生えたのかと思う程、その後ずっとその場に立ち尽くしていた。そしてその場所がまた邪魔…。
若者二人は何度も顔を見合わせ、意味深な溜息をついていた。
私が待ったのは5分もないぐらい。
そんなたった数分でも彼らの雰囲気が十分伝わってきた。
最近は高齢な人でもコンビニやハンバーガー店で雇われていると聞く。
若い人よりも真面目で欠勤も少なく、仕事が丁寧だから評判が良いと、どこかのニュースで読んだ。
だが今日の様子を見る限り、良い事ばかりではないようだ。
私も老後、金に困りどこかで働く必要に迫られた時、こんな風に孫のような年齢の人にキツイ口調で注意されるのかな…と想像すると辛かった。
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