災害時には家族一緒に
予想通り、義母から電話があった。
「ころりさん、大雨が怖いわね、そっちの家にお父さんと行こうって話しているの」
そう言っているのは義母だけだろう。義母が煩いので適当に頷いている義父が目に浮かんだ。
「大丈夫ですよ。すぐに過ぎ去るでしょうし」
ダメ元で言ってみたが、私が逃げれば逃げる程、義母の不安は膨らむばかり。電話の向こうで半泣きになっている。
「とりあえず私がそちらの家に行きますから」
諦めて私は言った。
自分の家に来られるのだけは避けたい。
そして義父母の家に着くと、さらに義母の強烈な歓迎を受ける。
歓迎と言っても喜んで良いのかどうか…。
こういう台風や大雨があると、決まって義母の同居熱が復活してしまう。
「こんな風に毎回ころりさんに飛んで来てもらうのは迷惑でしょう?」
そうです、迷惑です。
「だから一緒の家に住みましょうよ。そうすれば災害があっても安心出来るでしょう?」
お義母さんが安心出来るだけです。
本音を声にする事も出来ず、いつものように私は鈍感なフリをして別の話題に変えた。
そしてしばらくすると、スマホが鳴り、見ると珍しく実父からだった。
何かあったのかと電話に出ると、
「ころり、時間があれば今からお母さんのところに行ってくれないか?」と言う。
母から父に連絡があったらしいのだが、この天気で情緒不安定になっているので私に見に行って欲しいと言うのだ。
あの人もこの人も……どうして天気にそれ程大騒ぎするのか。
私の予想では父も母の相手をするのが重かったのだと思う。
人の言葉が耳に入らないぐらい興奮している母は手が付けられない。私、私、私の感情の押し付けだから。
「それならとりあえず電話だけしておくわ」
私は父にそう答えた。
わざわざ会いに行き、それが当たり前になるのが嫌だった。
そして実家に電話をすると、案の定母は怒ったような口調で、「近所の人達は子供に来てもらって安心だけど、私は一人で耐えている」と主張した。
それが当たり前。子供がいない人は誰も頼る人がいないのよ?
またいつものように反論したい気持ちがムクムクと沸いたが、私は何も言わなかった。言っても無駄だ、いつもの事。それよりも早く電話を切りたかった。
どうして親達は子供と自分を共同体にするのだろう。
どちらの親も、「災害時には私達は一緒にいるべき家族だ」と言うが、どうしてそれを怒った口調で言われなければならないのか…。
本当の災害に遭えばこんな事ぐらいと思えるのかもしれないが、それにしても台風や大雨の度にこんな事を繰り返すのが苦痛でしかない。
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