長男の存在感のなさ
バーベキュー大会で心が打ちのめされた母の日の夜。
そのまま毛布に包まり現実逃避してしまいたかったが、この日はまだ予定があった。
私達夫婦と夫の両親の4人で、外食をする事になっていた。
以前から義母は母の日のプレゼントを喜ばない。
「勿体ない。私に花を買うぐらいなら介護の為に貯金をして」
それが口癖。
毎年その言葉を聞き続けると、「それなら母の日は何も渡しません!」と宣言したいところだが、それは夫が許さない。
夫は目に見える親孝行を優先する。
記念日や盆、正月といった決まった行事を世間一般と同じようにしないと気が済まない。
そこまで大切な事だろうか…私は内心思う。
そんな義母と夫の気持ちの折衷案と言おうか…外食するのが無難だろうという事になった。
それは正解だったようで、義母は外食に関しては「いらない」とも言わず、食事中ずっと嬉しそうに一人で喋っていた。
まだ先日の義妹への不満も収まっていないらしく、その愚痴も…。
そんな話を聞きながら、私は何気なく義母に聞いた。
「お義兄さんは最近来られないのですか?」
「あぁ、忙しそうだから…」
義母はそう答え、それ以上何も言わない。
一瞬の沈黙。
気まずい空気が流れたが、私は義兄と義両親の距離がどんどん開いているようで不安だった。
今までは毎年母の日のプレゼントを義兄夫婦が持って来ていたというのに。やはり今年は義兄一人で来る様子もない。
帰宅途中、夫に言われた。
「別にわざわざあんな話題しなくていいのに」
兄の事を持ち出されたのが気に入らないらしい。
だけどあなたが聞いてくれないから私が自分で聞いたのよ!
不服そうな夫の横顔に、私は心の声で叫んだ。
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