嫁が実家に帰るのが嫌
朝から義母の電話があった。
「ころりさん、今日は百貨店に買い物に行きましょうよ」
先日夫が一人で実家に行った為、義母の気持ちはすっかり息子に向いていると思っていた。しばらく私の事は忘れて欲しい、そっとしておいて欲しい…そう思っていたが、3日ももたない。
私の体調を気遣い、「無理しなくていい」と言ってくれていたのは何だったのか。
「すみません、今日は私の実家に行く予定で…」と私は言った。嘘では無い。本当に今日は自分の実家に行かねばならない。
すると義母は、
「あら、そうなの?お母さんお元気?」と聞いたが、私の返事を聞く前に、
「お元気よね、私よりずっとお強いものね、精神的にも」と言った。
最後の「精神的にも」に含みを感じた。義母は私の母が気の強い人間だと思っている。実際、義母に比べれば話し口調も主張も強い。
さらに義母に聞かれた。
「お兄さんは帰ってこられないの?あちらのお嫁さんは?」
義母の言いたい事が伝わってくる。なぜ嫁に出たあなたばかりが実家に帰っているの?と言いたいのだ。以前にもハッキリそう言われた事がある。
「さぁ、どうでしょう。私は聞いていないので分からないです」と、私は誤魔化した。
「あら、そう……お兄さんはどう考えておられるのかしらねぇ」
話が長くなりそうだったので、私は、
「すみません、またこちらから電話しますね、今から出かける準備をしますので」と言い、電話を切った。
しかし義母の言うとおり、本当に兄はこの先の事をどう考えているのか…聞いてみたい。だが聞くのが怖い。
自ら介護問題を口に出すと自爆するような気がして。
そして予定通り実家に行くと、やはり兄も兄の妻も来ていなかった。
いたのは父だけ。母が呼んだらしい。
「ころり!早く座って!もう食事の用意出来ているわよ!」
そう言いながら手招きする母。
黙って淡々とそこにいる父。
私は近い将来自分がこの二人を介護する姿が目に浮かび、どうなるのだろう……と不安になった。
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