誰もいない住宅街
久しぶりに安定剤を服用した。
眠れない時や精神的に不安定になったら、早めに服用するようにと医師は言うが、癖になりたくなくてつい我慢してしまう。
しかしいざ服用してみると、やはり眠りの深さが違う。
こんなにぐっすり眠ったのは久しぶり。
途中で何度も目覚めたのだが、それでも次の瞬間には眠りに落ちた。
朝になり起き上がってみると、頭がスッキリしていた。
目の重さや吐き気も無い。
カーテンを開けると良い天気で、いつもならそれも嫌なのに今日はなぜか気持ち良かった。
本来ならGWはずっと休みの予定だった夫は、「仕事が気になる」と言い、朝から出勤してしまった。タダ働きなのに。
私は一人リビングから外を眺めた。
よし、花壇の手入れをしよう。
珍しく動きたい気分だ。
というより、日光に当たりたい。
玄関から外に出ると、意外に静か。
GWの前半は子供の声が煩く、井戸端会議の主婦達や家族連れ同士の話声で、ウンザリした気分だったが、なぜか中盤になりこの静けさ。
どうやら多くの人は旅行や実家への帰省で留守らしい。
夜になり近所の家を見渡しても、窓の明かりが消えているから。
静かな住宅街の一角で私は一人、土を触った。
スコップで土を掘る。
ザッ、ザッ、ザッという音がやけに大きく響いている気がした。
なんだかあまりにも静かすぎて、「この静けさは正月の朝ようだな」と思った。
暖かい日差しを背中に浴びながら黙々と作業をしていると、汗が噴き出てきた。
とても気持ち良かった。居心地が良かった。
いつもは嫌なこの地域も、近所の人達の気配がないだけでまるで別の場所のようだ。
改めて思う。
私は外が嫌いなのではなく、人がいる場所が嫌なのだと。
誰もいない外では心が自由になれるような気がした。
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