本音よりも嘘を求められる
立て続けに実家の母から連絡があった。
先日会ったばかりなのに……。
固定電話が鳴っていても出ずに放っておくと、今度はメール。
それでも返信をせずにいると、スマホが鳴り始めた。
真面目に親に応えなくていい。放っておけばいい。
そう思おうとするが、電話の音を聞き続けている事がストレスになり、母と会話をしていないのに既に胃が痛くなった。
「はい…」
根負けして電話に出ると、母の怒りが伝わってきた。
「やっと出た!何度も連絡していたのに!気付かなかったの⁉」
「うん、まぁ…」
その強さに圧倒されてすっかりいつもの気弱な私になっていた。
「何かあったの?」
用が無ければ電話しないで…そんな思いを込めて私は言った。すると母は、
「お花見に行きましょう!」と言う。
はぁ……溜息。憂鬱。また始まった。逃げたい。勝手に一人で行けば?
色んな気持ちが沸き上がったがどれも口にする事は出来ない。
ワガママで身勝手な娘になり切れない。とりあえずは母の言葉を一度は聞き入れ、その後で断る方法を探る。
「花見?きっと混んでいるわよ」
「私花粉症だし」
それとなく行く気が無いとアピールをした。
それでも母が「大丈夫よ!他のメンバーにも連絡するわね」と言う。
他のメンバーとは母の友人やその娘達の事だ。親子揃って皆で行くと言うのだ。どうして子を巻き込みたがるのだろう。
「親達だけで行けば?」
私がそう言うとまた母は少し不機嫌になり、諭すように言った。
「あのね、ころりの為に誘ってるのよ?引きこもっていたらダメでしょ?こういう事がないと誰とも交流が無いでしょう?同年代の女同士で楽しく過ごしなさい」
「私の為?じゃあお母さんの為じゃないのね?私の為なら放っておいてよ」
私の中で沸々と沸き上がるものがあり、思わず口から本音が出た。
すると母が言った。
「素直になりなさい。ころりは人の意見を素直に聞けない人間だって、先生も言っていたわよ」
母は昔から占いにハマっている。
定期的に通っている占い師がおり、その人の事を「先生」と呼び言われる事を信じている。その「先生」に娘の相談もしているらしい。
本音を言えば素直じゃないと言われる。
無理に嘘をつけば素直だと認められる。
どちらにしても楽になれない。
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