見知らぬ番号からの着信
どこかでスマホが鳴っていた。
どこだ?音が遠い。
しばらく家の中を探し、ようやくバッグの中にある自分のスマホを見つけた。
夫などは肌身離さずという感じで常にスマホを持ち歩いているが、私は使用頻度が低い上に、連絡があるとしてもほとんどが親からなので、スマホをどこかに放置してしまう事が多い。
バッグの中のスマホを見つけた瞬間、つい慌てて電話に出てしまった。
画面をタップする時にナンバーが表示されていたが、深く考える余裕もなかった。
よく考えれば見知らぬ番号からの電話に躊躇なく出てしまうなんて不用心だ。
だが長く鳴り続けていたその音に急かされてしまったような気がする。
「はい」
電話に出ると、見知らぬ女性の声が聞こえた。
「あの……突然のお電話で申し訳ありません。ころりさんですか?」
全く聞き覚えのない声の主に名前を呼ばれドキリとした。
誰?頭が回らない。
すると相手が言った。
「以前、○○会社にお勤めでしたよね?私、神崎の妻です」
そう名乗られても、まだ私の頭はボンヤリして、即座に反応出来ずにいた。
…えーっと、○○会社……。
徐々に記憶が戻り、数秒後にハッキリと理解した。
「はい、あ!奥様ですか⁉ご無沙汰しています!」
それは一時期私が勤めていた会社で、電話の主は社長の奥さんだった。
それにしても何年振りだろう。一体何の用なのだろう。
緊張しつつ私はスマホを握りしめた。
――続きます。(▶私の価値)
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