反論が通じない
「更年期じゃないの?」
母が電話の向こうでそう言った時、私は呆れて言葉も出なかった。
最近は義父母と会う事の方が多くなったが、相変わらず定期的に実家の母からも電話がある。そして毎回言う。
「どうしてうちに来ないの?」
「どうしてあちらの家に行く必要があるの?」
歳と共に母の私への依存は強まるばかり。
あまりに母からの圧が強く、私はウンザリした気分で思わず言った。
「とにかく私も精一杯なの。私自身強くない人間だから、あれこれ言われても負担なのよ」
言ってしまってから、もう少し母に上手く伝わる言い方をすれば良かったと思ったが遅かった。
やはり母は自分に向けた言葉だとは受け取らず、
「そんなにあちらのお義母さんに負担をかけられているのね」と言う始末。
私は我慢出来ず、キレ気味に言った。
「私は自分の親が負担なの!あちらの親の方がずっとマシよ!」
しまった……言い過ぎた。
猛烈な後悔。
しかし連日の母からの電話と、くどくどと説教を聞くストレスに私は押し潰されそうになっていた。
電話の向こうでしばらく母は沈黙し、ようやく発した言葉が
「あなた、更年期じゃないの?」だった。
次はこちらが絶句。
どうしてそうなるのだ。
母は、「私もあなたぐらいの年齢の時、気分の浮き沈みが激しくなったわ。そういう時もあるから気にしないで、ゆっくりしなさい」と言った。
私は既にキレ気味に言葉を発してしまった事で、どこか抜け殻のような状態でその言葉を聞いていた。
あぁ、母はいつまで経っても変わらない。
どうして全てを自分の都合の良い方に受け取るのだろう。
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