お岩さんの日
朝目覚めると、目が重かった。
目がしっかり開いていないように感じる。変だ。
恐る恐る鏡を覗くと、そこにはまさにお岩さんがいた。
片目が腫れて瞼が垂れ下がっている。
腫れているのか浮腫んでいるのか。
どちらにしても時々私の目はこうなる。
疲れていたり寝不足の時は特に。
憂鬱な気分でコーヒーを啜った。
今日は日曜日。近所の声が騒がしい。いっそこのまま眠ってしまいたい。
そう思ったが、今日は義父母の家に行く約束がある。
仕方なく私はその垂れ下がった目のまま義父母の家に向かった。
「あら、その顔どうしたの⁉」
最初、義母は驚いていたが、会話しているうちに私の目の事など忘れてしまったようで出かける準備をし始めた。
今日は義母と買い物に行く予定――だった。
しかしいざ義父母の家を出ようとしたその時、グラッと目の前が真っ暗になった。
酷い立ち眩み。
思わずしゃがみ込む。
「ころりさん!大変!お父さん!早く来てっ!!」
大騒ぎする義母の声が耳に障る。
「……大丈夫です。ちょっと立ち眩みで」
そう言いながらゆっくり立ち上がってみたが、気分が悪い。
多分貧血だ…そう思ったが、いつもより症状が強い為、このまま外出するのは負担だと感じた。
義母に今日の外出は中止にして欲しいと言おうとしたが、義母はそれどころでは無いといった様子で、
「お父さん!救急車!呼んで!早く!」と叫んでいる。
「お義母さん、本当に大丈夫です。慣れていますから、いつもの事ですから」
何とか義母を説得し、救急車を呼ぶのを止めてもらった。
「すみません、横になりたいので今日はこのまま帰ります…」
私はそう言ったが、見ると既に奥の部屋で義父が布団を敷いてくれていた。
「早くこちらに来て寝なさい」
義父と義母に促されて、断り切れずに布団に横になる。
正直、こんな場所で全く落ち着けない。眠れる訳がない。
しかし心配そうに私を見つめる二人を見ていると、その場から動けなかった。
私はそのカビ臭い布団の中でそっと目を閉じた。
なぜかいつもより義父母を身近に感じた。
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