突然の訪問者

スマホが鳴っている音がした。
咄嗟に義母かと思い、ドキッとした。いつ電話があるかと毎日ビクビクしている。
しかし次の瞬間、その音はLINE電話だと気付き、義母ではないと思い直した。
ラインで電話をかけてくるなんて夫しかいない。
そして画面を見て驚いた。
電話をかけてきたのは美智子さんだった。
少し前に私が体調不良の時にタイミング良くメッセージがあり、その優しい文面に少なからず救われた。
ラインの着信音。夫からだろうか。重い体を起こし、ソファからゆっくり起き上がった。..
心から信用している訳ではない。近付き過ぎたくもない。
だが私を傷付ける言葉を発する人ではないので会話をしていて楽だと感じる面もある。
なので時々ライン交換をするぐらいなら、このままの付き合い方でも良いかな…と思いつつあった。
しかし電話となると身構える。
それは少し踏み込み過ぎではないか?
偶然病院で会って会話するのは良いか、わざわざ電話をして話すというのは重い。
それとも何か用なのだろうか?でも私に用って何?
電話が鳴る画面を見つめたまま私はしばらく固まった。
出るべきか、無視するべきか…。
そうして悩んでいるうちに、電話はプツッと切れた。
ホッとしたものの、よく考えてみれば着信履歴が残るので、今度はこちらから電話を掛け直すべきではないか?という迷いが始まった。
このまま放置では次に会った時に気まずい…。
あぁ…こんな事で悩むぐらいなら、さっきの電話に出れば良かった。
後悔し始めたところに、再び電話が鳴り始めた。また美智子さんだ。
今度は迷う事なく、「えい!」という気持ちで私は電話に出た。
「ころりさん?ごめんなさい急に電話してしまって…寝ていましたか?」
こんな昼間に「寝ていましたか?」と聞くあたりが、さすが心療内科に通っている人同士というか、昼夜逆転しがちなのが分かっている。
「いえ、大丈夫ですけど…どうかしました?」
すると美智子さんが言った。
「私、今ころりさんの家の近くまで来ているんです」
その言葉に私は驚き鼓動が早くなった。
――続きます(▶待っていたのは見知らぬ人)
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