義母の甘い愛
義母の歯医者への通院に付き添った。
義母はまだまだ歯があるのだが、歯茎が痩せてきているらしく日常の手入れを指導された様子。
「嫌ね、歳をとると」
義母はそう言いながら、「息子にはしっかり歯を磨くように言ってあげて下さいよ」と私を見た。
いい歳をした息子でも、義母にとってはいつまで経っても子供なのだろう。
だが義母は一度言い始めるとクドイ。
「朝は歯を磨いているの?」
「甘い物を食べた後は磨くようにしなさいよ」
しばらくそんな話が延々と続く。
「はいはい、言っておきますから」
と呆れ気味に答えるが、「あなたも同じよ、ころりさん」と、その矛先が私の方に向き、歯磨き指導がエンドレスに始まる。
これが老人特有のクドさなのか。
途中から聞き流し、ぼんやりと義母の声を聞いていたら、ようやく義母の話題が変わった。
「そういえばこの前渡したチョコ、息子は何て言ってた?」
先日、「息子に渡して」と義母からチョコを渡された。(→義母の女子力)
何と聞かれても、夫は「あ、そう」と言い受け取っただけで、その後食べたのかどうかも私は知らない。
だが義母に私は言った。
「喜んでいましたよ。美味しいって言っていました」
すると義母は嬉しそうに、
「でしょう?息子の好みは私は分かっているから。子供の頃からあぁいうチョコが好きなのよ」と自慢げだ。
さっきまで息子の歯磨きの心配をしていたというのに、今は息子への甘いチョコ自慢。
なんだか矛盾している気がして私は苦笑した。
「お義兄さんにもチョコを渡したのですか?」
気になっていた事をさり気なく聞いた。
私の夫だけに依存しないで欲しい。義兄にも目を向けて欲しかった。だが義母は、
「あの子は滅多に顔を出さないから、知らないわ」と言い、急に表情が強張り静かになった。
なんだか前途多難な気がした。
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