義母の女子力
朝、義母から電話があった。
「今日は来られるかしらね?」
そう聞かれ、
「すみません、今日は買い物の予定があるので…」
そう答えたが、「買い物?丁度良かったわ、私も買いたいものがあるの」と言われてしまった。
だが今日の買い物に義母を連れて行くのは気が進まない。
例のバレンタイン用のチョコを買いに行こうと思っていたのだ。(やめられない義理チョコ)
こんなギリギリの時期に買いに行っても、既に売れ残りしかないのかもしれないが、億劫なあまり先延ばしにしているうちに日が迫ってしまった。
「バレンタインの特設会場に行く予定なので、お義母さんは疲れると思いますよ。だから…」と断ろうとしたが、義母は嬉しそうに、
「チョコ?私も見てみたいわ、連れて行って下さいよ」と言う。
70代のお婆さんには不似合いな場所だと思うが……。
何より足が悪く歩くのが遅い義母を連れて人混みを歩くのは正直疲れる。
だが義母はすっかり一緒に行く気になり、「今から出かける準備をしますから。待ってるわね」と言い電話が切れた。
ただでさえ億劫な買い物がさらに憂鬱になった。
そして義母を連れてデパ地下に。
義母はウキウキした様子で綺麗なチョコを見ている。
若い女性達が並ぶ中、「ちょっとごめんなさいね」と言いながらかき分け、「これを見て、ころりさん」と手招きしている。
そんな事よりも私は頼まれた義理チョコを早く買ってしまいたい。
ただでさえ優柔不断な私。
人の為の買い物だと思うとさらに決められなくなる。
と、迷いながらチョコを見ていると、横から義母が次々と口を出してきた。
「それは安っぽいわ」
「私ならこれにするわね」
義母と一緒にいる為、何時間もその場で迷っている時間はなく、私はどうでもよくなってきた。早く帰って義母と離れたい。
そして結局私の職場の義理チョコを義母がほとんど決めてしまった。ある意味義母に助けられたのかも。
義母を家まで送り、義父母の家を出ようとした時、義母に「これ、息子に渡して」と言いチョコを渡された。
いつの間に。
一方私の方は義理チョコの事で頭がいっぱいで、夫へのチョコを買う事をすっかり忘れていた。
義母の方が女子力が高いのかもしれない。
義母の歯医者への通院に付き添った。義母はまだまだ歯があるのだが、.
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