やめられない義理チョコ
スマホが鳴った。
見ると意外な人からの電話。
それはパート先の酒家さんだった。
私は以前から彼女が苦手だ。
今まで私と酒家さんは、パート先での勤務形態が似ているからと言い、何かと一緒にされる事が多かった。
一つの部屋で二人きりで働いていた時期もある。
その為関わる事も多かったが、今では彼女は契約社員となり、私の方は以前より会社に行く日が減った。これで関わる事はほとんど無くなると期待していたのに。
電話に出ると酒家さんは、
「ころりさん?バレンタインデーの事だけど」と、その事を相談したいと言い出した。
相談も何も……。
実は私、今年のチョコは知らぬフリを通そうかと思っていた。
今まで週に2日勤務だった時でも迷っていたほどなのに、今では上司の言葉に甘え、用事が無くても在宅で仕事をさせてもらう事が多い。その為週に1日も行くか行かないかの状態であり、気持ちはすっかりよそ者。
こうなった今、バレンタインデーはスルーさせてもらおう。
14日に出勤しないし……と一人で思っていた。
だが酒家さんは渡すのが当然と言う口ぶりで、
「今年はころりさんと一緒に渡そうかと思ってるの」と言う。
その「一緒に」という言葉も意外だった。
昨年は何を思ってか私に、「チョコで競争しよう」と言い出した酒家さん。
そんな彼女が今年はまた「一緒に」と言っている。本当に気紛れだ。
私は、今年は渡さない方向で考えていたと彼女に伝えた。
すると彼女は、
「それは絶対ダメよ!今まで渡していたのに急に渡さなくなるのは失礼よ!出勤日数の問題じゃないわ」と力説した。
そこまで言われるとそんな気もする。
結局今年もそういうイベントに関わらなくてはいけないのか……面倒。
と思ったが仕方なく彼女に同意すると、彼女は
「ころりさんは時間があるでしょう?今年は任せていいかな?」と言う。
え?それを頼む為の電話だったの?
「後でお金は渡すから。お願い!子供の用事と仕事で忙しくて」
そう言われて何も言えなくなった。
今年もまたあの女性が群がるチョコ売り場に行かねばならない。
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