息子夫婦から同居を提案
義父母の家に行くと、見慣れない顔があった。
挨拶をすると義母が私を紹介した。
「名方さん、うちの次男の嫁です」
その名方さんとは義母の古い友人らしい。といっても今まで会った事も聞いた事もなかったし、それ程義母と仲が良い関係ではない様子。
私は邪魔にならないようにキッチンに行った。
すると義母が、「ころりさんもここに座って下さいよ」と言う。
見ると名方さんも、こっちこっちと手招きしている。
仕方なく私は二人とテーブルを囲む事になった。
「名方さんね、来月から息子さんと同居する為に引っ越しするらしいの」
あぁ、嫌な予感。
この場に座ったのが間違いだった。逃げ出したい。
義母の周辺では最近、子と同居する人が出始め、時々こういう話題を聞く。その度に私は身を固くする。
「そうですか……」
としか言い様がない。私が曖昧な笑顔を向けていると、義母はしきりに繰り返した。
「いいわねぇ、羨ましいわぁ」
一方名方さんの方は建前なのか本音なのか、
「そんな事ないわよ。同居なんてお互い気を遣うだけだし、私は一人で暮らしていたいんだけど、息子夫婦が一緒に住もうってウルサイから仕方なく」
名方さんは義母を気遣って遠慮気味に言ったのかもしれないが、この、
「息子夫婦が言うから」という言葉が義母を刺激してしまった。
「えぇっ⁉息子夫婦から言ってくれるの⁉なんてできたお嫁さんなの!いいわねぇ~」
……私はどういう顔をしてこの場にいればいいのか。
義母の言葉は私への嫌味なのか、同居しようと言って欲しいアピールなのか、それともただ鈍感で素直に言っているだけなのか。
その様子を見ていた名方さんの方が気を遣い、
「あなたのお嫁さんもこんなに可愛らしい方じゃないですか。ねぇ?」と私の顔を見た。
「ねぇ」って私に言われても……。
ますますどういう反応をして良いのか分からず私はただ俯いた。
あぁ、義母の周囲に一人暮らしで頑張っている老人がたくさんいればいいのに。
ほとんどの人が子と同居したり、頻繁に会うような関係なので、義母の考え方はそちらの方向に固まるばかり。
どうしてそこまで同居に拘るのだろう。
私には全く理解出来ない。
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