老後の人間関係
「デイサービスに行ってきた」
そう聞いた私は最初、介護員として働きに行ったのかと思った。
「違うわよ。私が介護される側」
電話の向こうでそう言いながら笑う叔母の声を聞き、「嘘でしょ」と驚いた。
私の叔母は70代だがまだまだ若くて元気だ。
つい先日までは介護員として働いていた叔母なのだ。
それがまさか利用者になるなんて。
咄嗟に私は、家族に疎まれているのだろうか……と思った。叔母は悪い人間ではないが、少し面倒臭い面がある。
正直なところ、私もあの叔母と同居していたら、きっとどこかに行って欲しいと思うだろう。
案の定話を聞いていると、娘夫婦にデイサービスに行く事を勧められたらしい。
少し前まで働いていたパートは雇用期間満了となり、再雇用はなかった為にしばらく家にいたらしいが、叔母の方もずっと家にいるのは娘に気を遣うと言う。
しかし……。
どう考えてもあの足腰も元気で頭の回転の速い叔母が、デイサービスに通う姿が想像出来ない。
この時も、「ころり、スカイプで話そうよ」と言ってくるような叔母なのだ。
同年代の老人達と話が合うのだろうか。
「デイってどんな雰囲気なの?」
なぜか恐る恐るという感じで私は聞いた。
「そうねぇ……女の井戸端会議ね」と叔母。
叔母は夫婦でデイサービスに通っているが、ほとんどの利用者は未亡人の女性だと言う。
70代が最も多く皆口だけは元気。
なので若い頃と変わらず、派閥とまではいかずとも仲良しグループが出来ているらしく、そのグループで同じテーブルに座る。もし仲の良い人がいなければ余った場所に座らされる。
「仲良しの人が出来ないとデイサービスは行きづらいでしょうね」と叔母が言った。
私は聞いていてゾッとした。そんな年齢になってまで、そんな事を続けなければならないのか。
死ぬまで人間関係に終わりはないと思うとウンザリした。
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