普通でない関係
母から電話があり、また父と3人で食事をしようと言う。
昨年、父が退院した後に会ったばかりではないか。
「お父さんの具合が悪いの?」
もしかして父の体調を気遣い会おうと言っているのかと思い母に聞くと、「それは大丈夫みたい。元気そうよ」と言う。
その母の口調から、あれからも母は頻繁に父に連絡をとっているのだな……と思った。
父は迷惑ではないのだろうか?
母に圧倒されて断れないだけでは?
「そっとしておいてあげれば?迷惑でしょ」と私は母に言った。
だが母はなぜか最近、父の世話を焼きたがる。
「男が病気で一人なんて大変でしょう」と母は言うが、それは言い訳で本当はただ父と会いたいだけのように見える。
それとも母が求めるのは父本人ではなく、父と私と兄が揃っていた頃の家族であり、父と会う事でそれを取り戻そうとしているのかもしれない。
だからか、母が会いたいのなら一人で父と会うなり食事なりすればいいのに、すぐに私を誘う。
しかし私を巻き込まないで欲しい。
母と父が互いにどう思っているのか知らないが、近づけば近づく程、互いにボロが出てまた昔のようなギスギスした関係に戻るだけ。
今穏やかな関係に見えるのは、一定の距離がある事と、父が合わせて我慢しているからだ。
それが分からない母は嬉しそうに私に言った。
「時々また家族で食事するのもいいじゃない」
「家族って……もう離婚しているのに」と思わず私が言うと、「この齢になるとそんな事どうでもよくなるの!どんな人とでも支え合って生きていきたいじゃない」と、母は感情的に言った。
普通じゃない。
やはり母は変わっている。
支え合うというより、ただ母は孤独で寂しく、誰でもいいから支えて欲しいだけだろう。自分も相手を支えているつもりだろうが、それは相手にとって負担でしかない。
「会うなら兄にも連絡したら?」
もし「家族」に拘るのなら、兄も呼ぶべきだろうと思った。そうして欲しかった。兄にも現実を見せたかった。
だが母は言った。
「兄さんは忙しいから無理でしょう。私達3人でいいじゃない、ね?」
……やっぱり。
母はなぜか兄には気を遣っている。自分のワガママや感情を兄にはぶつけない。私にはこれ程ぶつけるのに。
父と会う事も、母は兄に対して後ろめたさがあるのだ。それが余計に私をイライラさせた。
後ろめたさを感じてまで家族ごっこは必要ない。
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