よそ者の私
上司の計らいにより、在宅で仕事をさせてもらえるようになり、職場に行く日がさらに減った。
メールや電話で連絡を取り合う事はあるが、職場に行くのは週に1回あるかどうか……という程度。
元々週2回しか行っていなかったので、こうして書くと大差はないように見えるが、実感としてはかなり変わった。
週に1回程度しか行かない職場、それはもう完全にお邪魔します状態。
疎外感が半端ない。
座る席さえ、行く度に場所が変わっているようになり、その時々で空いている席に座るようになった。もう私の固定場所はない。
こんな状態になってまで、この職場と繋がる意味があるのだろうか。
お情けで雇ってもらっている……そんな思いをしながら続けるのが辛い。
辞めたい。
何度もそう思うが、少しでも生活費を稼がなければならない事、義父母の世話と両立出来そうな職場が他にはないという事を考えると、続けるしかないと自分に言い聞かせた。
割り切るのだ。
私はよそ者。部外者。
ただこの仕事を手伝いに来ているだけ。この職場の人間ではないと思おう。
そして久々に出勤した日。
酒家さんに話しかけられた。
以前は出勤する度に向かい合って彼女の話し相手をするのが苦痛だった。だがこうして滅多に関わらなくなった事で、私の気持ちもかなり軽くなった。
「ころりさん久しぶり!私ね、新しい仕事、任されちゃった!」
ウキウキした調子で話す酒家さん。
あれ程仕事が出来なかった酒家さんだが、どうやら順調に仕事を覚え、知らぬ間にステップアップしているらしい。
「ころりさん、よくやるわね。私なら夫の親の世話なんて絶対無理だわ」
と酒家さんが言った。
「仕事している方がずっと楽しいし」
ズキズキ。
聞きたくない言葉が並ぶ。
そんな事分かっている。でもそうなれない自分が悔しい。
「じゃ、またお茶しようよ。色々聞いて欲しい事があるのよ」そう言いながら酒家さんは自分の席に戻って行った。
もう私とは違う世界にいるように見えた。
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