嫁に出した娘、嫁にもらった息子の妻
義実家で義妹と会った。
かなり久しぶり。一人娘だというのに、普段は全く出入りしている様子はない。私も人の事は言えないが……。
昔は子を連れて来る時もあったが、今では子も忙しいらしく、義妹は一人退屈そうにキッチンでスマホを眺めていた。
義母もそんな娘に何を言うでもなく、居間で舅とテレビを見ている。
私はまず先に義妹に挨拶した。
「おはようございます」
「あ、おはようございます」
と、挨拶をしたものの、それ以降の会話が続かない。
だが会話をしなくても気にしないのが義妹。スマホから目を離す事なく、まるでそこに私が存在しないかのように一人の世界に入っている。
「ころりさん?ご苦労様。こっちに来て下さいよ」
居間から義母の呼ぶ声が聞こえた。
私は居間に入り、「恵さん、来られていたんですね」と義母に声をかけた。
私の中では、少しでも義母と義妹が仲の良い関係でいて欲しいという気持ちがある。
私にばかり寄り掛かろうとする義母の心が、実の娘に向いてくれれば気が楽だ。
だが義母は、
「えぇ、そうなの。でもあの子も忙しいから大変なのよ」と言い、滅多に実家に来られないのは「忙しいから」と私にも自分にも言い訳しているかのように見えた。
しかし私は粘り、
「お正月には恵さん家族も来られるんですか?」と義母に聞き、義妹の話題を続けようとした。
すると背後から、
「来ないわよ。旦那の親を放って来られる訳がないし」と声がして、義妹も居間に入ってきた。
「それは当然よ。夫の親を放っておくなんて絶対ダメですよ」と義母も自分の娘が言う事に頷いていた。
これは……。
間接的に私にも「正月は義実家にいるべきだ」と言っているのだろうか。
義妹はそれ以上の会話をする事もなく、すぐに帰ってしまった。
「恵さん、朝早くから来られていたんですか?」
義母にそれとなく聞いてみたが、
「そんな事ないわよ。ころりさんが来る5分程前に来たわ」と義母は言い、「あの子は忙しいから」と繰り返した。
娘は嫁に出した人。
息子の妻は嫁に貰った人。
その考え方が強すぎる。
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