働く女性
眼鏡が壊れた。
ソファの上にそのまま置いていた眼鏡を、うっかり上から座ってしまった。
まるでどこかのCM状態。
だがあのCMと違い、私の眼鏡は簡単に曲がってしまった。
修理出来るのだろうか。買い換えるべきか。
完全に折れた訳ではないが、かなりフレームが歪んでいる。
少しでも節約したいと思い、ダメ元で私はその眼鏡を購入した店に行った。
店員にその眼鏡を見せると、その人は
「あら~、派手にやっちゃいましたね」と明るく笑った。
私と同年代ぐらいの女性。ハキハキとした話し方で、営業にピッタリという感じ。
「これは完全に元に戻せるかどうか……」
店員は迷っていたが、私が「使えなくなってもいいので、試してもらえませんか?」と頼むと快く引き受けてくれた。
そこから集中してその店員は修理を始めた。
だが様子を見ていると、どうやらその店員はこの店の店長らしく、作業の途中で他のスタッフから次々と質問されたり、指示したりしている。
とても生き生きして見えた。
独身だろうか?既婚者でもフルで働いているのだろうか?
社会の役にも立たず、ただひっそり生きている自分と比較し、とても羨ましかった。
ぼんやり眺めていると、
「はい、出来ました!」と笑顔のその店員が近寄ってきて、完璧に元通りになった眼鏡を渡された。
私は礼を言い、店を出た。
少し歩いて振り返ると、その店員はまだ出口に立ち、私を見送ってくれていた。
働く女性、あんな風になりたかった。
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