あの嫁に孫を取られた
ある日義母が言った。
「あの嫁に孫を取られたわ」
それを聞いて、義母も義姉が家を出た事を知っているだと知った。
いつ義兄と話したのか、どういう説明をされたのか分からない。
さすがに何ヵ月も経ってくると、義兄も話さない訳にはいかないと思ったのか。
義母は義姉の事に関してほとんど何も話さない。
私だから話さないのかと思い夫に、「お義母さんとお義姉さんの事で何か話した?」と聞いてみた事もあるが、「何も」と言うだけだった。
おかしな家族だ。
嫁が家を出るという一大事だというのに、誰もその事に触れない。
今ではまるで最初から義姉はいなかったかのような存在になっている。
私ももしこの家を出たら同じような扱いになるのか。
そんな中で私から義母に義姉の話題を振る訳にもいかず、ずっと話題にしてこなかった。
それが不意に義母が「孫を取られた」と言い始めたので驚いた。
「お義姉さんと話したのですか?」
そう聞いてみたが、それは無いだろう。
「あんな人と話す訳ないでしょう。勝手に出て行って無責任なんだから。あの人がどうしようと勝手だけど、孫が可哀そうよ」
義母はその後も、「孫は息子と住むべきよ」「内孫ですから」と繰り返した。
人の家庭の事はよく分からない。
中には父親と暮らす子供もいるだろうが、離婚した親の子の多くは母親を選ぶのではないか。
孫が幸せならどちらと住んでもいい……そう思えないのか。
義母の「内孫」を強調するところが聞いていて嫌だと思った。
「お義姉さんも落ち着いたら戻ってこられるかもしれないですし」
かなり可能性の低い話だが、この嫌な空気を変えたくて思わず言った。籍はまだ抜いていないらしいので、全くあり得ない訳でもない。
しかし義母は言った。
「もし戻ってきたりしてもこの家には入れませんよ。私は許しません!」
……強い。
嫁が出て行ったのは自分のせいだとは考えた事がないのだろうか。
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