嫁と同じ場所に
「あらぁ、サッパリしたわね」
私の顔を見るなり義母が言った。
久々に髪をかなりカットしたので、誰が見ても変化に気付く。
「いいわねぇ、若い人は。色々な髪型が出来て」
義母は羨ましそうに私の頭を眺めた。
義母は特別お洒落な人ではないが、年寄扱いされるのを嫌う。
介護の話になると、「私ももう歳だからお世話してね」と、年寄だとアピールするのに、こういったファッションや美容の話になると、「年寄の行く店は嫌い」と言う。よく分からない。
「私も美容院に行こうかしら」
義母が言い始めた。嫌な予感。
私が何も答えずにいると義母に、
「ころりさん、どこの美容院に行っているの?」と聞かれた。
私が「少し遠いところ」と曖昧に濁すと、
「私もころりさんと同じところに行こうかしらね」と言い始めた。
……どうしていつもこうなるのだ?
私の実母も全く同じタイプだが、この年代は他人の生活に首を突っ込むのが普通なのか?なぜいつも、「私も一緒に」となるのだろう。
「ころりさん、その美容院に連れて行って下さいよ」
あぁ、嫌だ。
連れて行くのが面倒な訳ではない。
私の世界に入って来られるのが嫌なのだ。
「お義母さんはいつもの美容院の方がいいですよ。近いですし」
そう言ったが、「私、ころりさんの行ってる美容室に行ってみたいの」と、諦める気配がない。
重い。
義母には娘もいるのに、どうして嫁にすり寄ってくるのだろう。
一定の距離を保つのが難しい。
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