ゴミ捨て場に行くのが怖い
ゴミ出しに行くと、近所の主婦達が円陣を組んでヒソヒソと話し込んでいるのが見えた。
「しまった……時間をずらせば良かった」
そう思ったが時すでに遅し。
皆に気付かれてしまい、引き返す訳にもいかない。
このゴミ収集場、私の家からは角を曲がった場所にある。
家からはその場所が見えない為、いつも「誰もいませんように」と願いながら、恐る恐るゴミ捨てに行く。
そんな事を顔に出さず、出来るだけ笑顔で挨拶した。
「おはようございます」
「あ、おはよう~。今ね、みんなでころりさんの噂をしていたところだったのよ」
ドキッ。
一瞬で胸が締め付けられた。
私の噂だって?嫌な予感しかしない。
「え?何だろう?」
わざとらしく惚けた言い方をしてみたが、本当はその場から逃げたい気持ちでいっぱいだった。
「来月のクリスマス会、参加できるわよね?」
その場にいた主婦達が一斉にこちらを見る。
SADの私は皆に注目されるだけで声が出ない。
私が「あ、え…っと」と口籠っていると、「去年も出てくれたでしょう?助かったわ」と、いつも近所を取り仕切るボス主婦が言った。
確かに昨年も断れずに嫌々ながら参加した。(→私達の一員)
今読み返してみると、「そうか、参加して良かったと思えたのか……」と信じられない気もする。1年経った今ではやはり相変わらずこういった行事から逃げ出したい気持ちでいっぱいだ。
「皆さん参加するんですか?」と聞くと、「ここにいるメンバーはみんな参加するわよ。あ、でも丸山さんだけ事情で仕方なく不参加なの」とボス主婦が言った。
名前を出された丸山さんはすかさず、「ホント、ごめんねー。本当は私も参加したいのは山々なんだけど」と言いかけ、それを周囲の主婦達は口々にフォローした。
「いいのよ、だって大切な受験でしょ!こんな自治会の行事に時間取ってられないわよね」
「誰だって受験の時にはそれが優先よ。私達もその時は欠席させてもらうしお互い様よ」
どうやら丸山さんの子が来年受験らしく、それを理由にこのクリスマス会を欠席するらしい。
心のどこかで引っ掛かった。
「お互い様」
私はそのお互いに入っていないように思う。どこまでも一匹狼。
私の中のひねくれた心が顔を出し、つい言ってしまった。
「私も最近親の介護があって忙しくて……」
一瞬その場が白けた。
しまった、言わなければ良かった。また自分で溝を作ってしまった。
その後、ボス主婦は私の言葉を聞き流すように、「ま、少し考えておいてよ」と言い、私は逃げるようにその場を離れた。
快く参加する事も出来ず、潔く断る事も出来ない。
どうすれば世渡り上手になれるのか……分からない。
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