家族ごっこ
――前回の続き。
付き添いに行ってる?
胸がザワザワした。
私は返事をせず黙っていたが、母は気にせず話を続けた。
父の同居相手が亡くなったと知り、気になったので父に電話をした事。
一度会って話をしようと母が言うと、明後日から入院する事を知らされた事。
そして今、父の付き添いの為に病院に行っている事。
私はその話を聞きながら、また母の押し付けが始まった……と思った。
「付き添いって、お父さんに頼まれたの?」
「違うけど、あの人、他に頼れる人がいないでしょ?仕方ないじゃない」
やはり思った通り。
父が母に付き添いなど頼むはずがない。
もし私が入院する事があったとしても、母にだけは会いに来て欲しくないと思うから。
「頼まれてもいないんだから、放っておけばいいのに。嫌かもしれないでしょ?」
私は父の気持ちを代弁するつもりで言った。
だが母には通じず、
「あなたはまだ若いから老人や病気の人の心細さが分からないのよ」と言う。
そういう問題じゃないのに。
母には「一線を引く」という事が出来ない。
父の相手の女性がいなくなったと知り、また平気でズカズカと父の生活に入っていく。
それをハッキリと断れない父。
私達の歪んだ関係は何年経っても変わらない。
母を中心として皆が振り回される。
母は言った。
「それで、ころりもお見舞いに一度来なさいよ。お父さん喜ぶから」
私はとてもそんな気になれない。
父と会うのなら、母の目の届かない場所で二人で会う。
今更家族ごっこなんて無理。
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