愛情不足な親子
夏に一度父から電話があった。
→突然の知らせ
同居していた女性が亡くなったという知らせだったが、それを母に知らせるべきかどうか悩んでいるうちにそのままになっていた。
面倒な事を避けたかったのかもしれない。この事を知った母の心が乱れそうで、それを見るのが怖かった。
だが母はそれを別の人から聞き知ったらしい。
母から電話があり、
「あの人、亡くなったらしいわよ」と私に言った。
とぼけて知らぬフリをするべきか一瞬迷ったが、後々嘘がバレそうなので諦めて事実を話した。
「うん、知ってる。お父さんから電話があったから」
そう言うと母はしばらく絶句し、「いつの話?」「知ってて黙っていたの?」と、絞り出すような声で言った。
「うん……言おうと思っていたんだけど……」
母の怒りに触れてしまいそうで、私の心が怯えた。
「ふーん、あっそう」
言葉少ない母。
それが余計に私をオドオドさせた。
「私も聞いてからそれほど経っていないの。お母さんに話すタイミングもなくて……」次々と言い訳ばかり口から飛び出す。
「別にいいけど」
母は不機嫌な声でそう言い、「でもどうしてころりに電話してきたのかしらね?」と続けた。
「ころりに関係のない事じゃない?迷惑でしょ」と終始不機嫌なままだった。
私は感じていた。
母はきっと父から電話が欲しかったのだ。
父が連絡をしてきたのが自分ではなく娘である私であった事が気に入らないのだ。
そして私が母を気遣って何も伝えなかった事が、さらに母を孤独にさせた。
「私に余計な気を遣わなくていいのよ、どうでもいい事なんだから」と言う母の声を聞いていると、母の寂しさや愛情不足を感じずにはいられなかった。
こんな母だから私は全てをさらけ出せない。
母は誰からも本当の愛情を受けた事がないように思った。
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