不安の悪循環
――前回の続き。
歯科衛生士が準備をしている間、胸の鼓動は治まらなかった。
やはり私は変だ。
最近は落ち着いた、治ったと思っていたが、何も変わっていない。もう普通の人間には戻れないのか。
吐き気が酷くて不安がMAXだった。
型取りするだけなので怖い訳ではない。
ただ途中で吐き気が我慢出来なくなり、パニックになるのでは……と不安だった。
そんな私をよそに、準備は着々と進んだ。
「少し不安で」と伝えれば、きっと少しは気が楽になったかもしれない。
だがその声が出なかった。
「では口を大きく開けて」と衛生士がグイッと型を口の中に押し込んだ。
喉の奥に器具があたり、やはり猛烈な吐き気が……。
どうしよう、どうしよう。
そう思っていると、手を添えていた衛生士が「ゆっくり鼻で呼吸して下さいね」と声をかけてくれた。
さらに「もう少しで固まりますからね」とも。
その「もう少し」と言う言葉で私の緊張も少し緩む。
大丈夫。このままあと少し我慢すれば乗り切れる。
と、その時、その衛生士が手を離し、その場から立ち去ってしまった。
――一体どこへ?
急に不安が戻る。いつまで放置されるのか?この我慢はいつまで続くのか?吐き気がどんどん押し寄せた。
きっと5分は経った。
それでも衛生士が戻らない。
私の手は震え、汗ビッショリ。涙まで出てきた。
どうしよう、限界だ。どうしよう。
そう思った時、やっと衛生士が戻り、型取りを外してくれた。
生き返った。何よりパニックで嘔吐せずに済んで心からホッとした。
「大丈夫でした?」
私の様子が変だったのか、衛生士が私を気遣ってくれた。
「はい……でも少し苦しかったです。皆さんはこの型取りが平気なのですか?」
終ってからようやく正直に心の声が出た。
「そうですねぇ……中には苦手な人も少しいますね。あ、やっぱりころりさんも苦しかったですか?すみません!」と、衛生士は言い、
「実はころりさんは親知らずまであるので、通常より大きいサイズを入れさせて頂いたのです。だから普通の人より苦しかったかも」と続けた。
それなら最初にそう声をかけてよ!と一瞬思ったが、いや、そうでなくて良かったと思い直した。
最初から「普通より苦しいです」なんて言われてしまえば、きっと構えてしまい必要以上に苦痛に感じただろう。
結果的には後で知って良かった。
だがつくづく思う。こうして何かある度にパニック症状が起こる自分が情けない。
パニックになる経験をする事で、次回もまた同じ事が起こるのではないか……そんな不安が積み重なるだけだ。
その次が怖くて仕方がない。
きっと5分は経った。
それでも衛生士が戻らない。
私の手は震え、汗ビッショリ。涙まで出てきた。
どうしよう、限界だ。どうしよう。
そう思った時、やっと衛生士が戻り、型取りを外してくれた。
生き返った。何よりパニックで嘔吐せずに済んで心からホッとした。
「大丈夫でした?」
私の様子が変だったのか、衛生士が私を気遣ってくれた。
「はい……でも少し苦しかったです。皆さんはこの型取りが平気なのですか?」
終ってからようやく正直に心の声が出た。
「そうですねぇ……中には苦手な人も少しいますね。あ、やっぱりころりさんも苦しかったですか?すみません!」と、衛生士は言い、
「実はころりさんは親知らずまであるので、通常より大きいサイズを入れさせて頂いたのです。だから普通の人より苦しかったかも」と続けた。
それなら最初にそう声をかけてよ!と一瞬思ったが、いや、そうでなくて良かったと思い直した。
最初から「普通より苦しいです」なんて言われてしまえば、きっと構えてしまい必要以上に苦痛に感じただろう。
結果的には後で知って良かった。
だがつくづく思う。こうして何かある度にパニック症状が起こる自分が情けない。
パニックになる経験をする事で、次回もまた同じ事が起こるのではないか……そんな不安が積み重なるだけだ。
その次が怖くて仕方がない。
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