娘より嫁
夫の実家に行った時、夫の妹も来ていた。
だが義母の傍に行かず、一人キッチンの椅子に座りスマホを眺めていた。
「あ、こんにちは。来られていたんですね」と私。
「こんにちは。そう、母に呼び出されて仕方なく」と義妹は静かな口調で言った。
この家は娘の存在感がない。
義母は以前から嫁にばかり頼る。それが不思議でならない。
普通は嫁より実の娘の方が話しやすかったり、頼りたいと思うのではないだろうか。
なのにこの親子、壁がある。
義妹はほとんどこの家に寄り付かない。
本人が言ったように、呼び出された時に仕方なく来る程度だ。
「お義母さん、大丈夫かな?」
「いつもの事でしょ」
義妹は冷めている。
口数も少なく、話が続かない。話しかけ辛い。いつも機嫌が悪いように見える。
こうして文字にしてみると、私と同じだ。
私も他人から見たらいつも機嫌が悪く見えるのだろうか。
それでも義妹は自分の夫の親と同居している。
私から見ても人付き合いが得意そうではなく、無口で愛想のない義妹。
そんな人でも親との同居を拒絶する事なく受け入れている事を尊敬する。
そしてそんな人が身近にいると、堂々と同居が嫌だと言い辛い。
義母からすれば自分の娘が「嫁の手本」だ。
だから私にも同居と介護は当たり前だと言う。
「私、もう帰るわ」
義妹が立ち上がった。
義母に声もかけずに玄関に向かう。
見送る私を振り返り、義妹は言った。
「ころりさん、母の事よろしくお願いします」
私は「はい」と答えるしかなかった。
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