消えてしまいたい
―――前回の続き。
静まり返った診察室。
ズラリと7人ほどの看護師が横に並んでジッと私を見ている。
正面に座っている医師は、こちらも見ずに何か書類を見ていた。
「よろしくお願いします」私がそう言うと、
「で、切るの?」といきなり返された。
それ以上は何も言わない医師。数秒の沈黙がとても長く感じられ、私を見つめる看護師の視線が痛かった。
私が何も答えられないでいると、「これね、手術するならこんな感じ」と言い、PC画面を私に向けた。
そこにはグロイ手術写真が写っており、パックリ切り開き血だらけの皮膚や、まるでフランケンシュタインのような傷跡を見せた。それもカラー。
そのあたりで私はもう、「この医師に頼むのは私には無理だ……」と思っていたのに、それに反して何かそれらしき言葉を発しようとした。
「出来ればとりたいとは思っているのですが、不安神経症で大丈夫かという不安もありまして……」と、情けない言葉を並べた。
すると医師は黙って下を向いている。相変わらずズラリと並んだ看護婦の視線が痛い。
居た堪れない気持ちのまま私はさらに情けない言葉を続けてしまった。
「やっぱり手術となると痛いんですよね?」
医師は少し怒ったように答えた。
「当たり前でしょ」
「傷跡もかなり残るのでしょうか?」
「御覧のとおり」と、医師はPC画面を顎でさした。
もう早く帰れと言われているような空気いっぱいで、「すみません、また考えて出直します」と言うと、医師はホッしたように「そうして下さい」と言った。
私は逃げるように診察室を出た。
あの問診表は何の為だったのだろう。そういう人には考慮しますという意味ではなく、治療を避ける為の下調べだったのだろうか。
迎えに来てもらう為に「診察終わったよ」と夫に電話すると、「えぇ!?もう?ちゃんと話せた?」電話の向こうで夫が驚いている。
目に涙が浮かんできた。
なんて情けない自分。消えてしまいたい。もう一度生まれ変わって強くなりたい。
ムシ暑い街中の交差点で、私は一人泣いた。
居た堪れない気持ちのまま私はさらに情けない言葉を続けてしまった。
「やっぱり手術となると痛いんですよね?」
医師は少し怒ったように答えた。
「当たり前でしょ」
「傷跡もかなり残るのでしょうか?」
「御覧のとおり」と、医師はPC画面を顎でさした。
もう早く帰れと言われているような空気いっぱいで、「すみません、また考えて出直します」と言うと、医師はホッしたように「そうして下さい」と言った。
私は逃げるように診察室を出た。
あの問診表は何の為だったのだろう。そういう人には考慮しますという意味ではなく、治療を避ける為の下調べだったのだろうか。
迎えに来てもらう為に「診察終わったよ」と夫に電話すると、「えぇ!?もう?ちゃんと話せた?」電話の向こうで夫が驚いている。
目に涙が浮かんできた。
なんて情けない自分。消えてしまいたい。もう一度生まれ変わって強くなりたい。
ムシ暑い街中の交差点で、私は一人泣いた。
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