地域医療連携
「犬は皆放っておいて欲しい」
獣医師にそう言われ、私は言葉が出なかった。
そうなのか。だがこのまま放っておく事は私自身が辛い。耐えられるだろうか。
迷っていると、獣医師は続けて、
「でも私はまだ出来る治療が残されているなら、何でもやりたいですけどね」と言って笑った。
そして
「だって今のまま放っておくのも辛いですから」と、私の心を代弁するかのように言った。
私は検査と治療をお願いする事にした。
愛犬には負担がかかる。治る保証はない。金もかかる。
だが出来る事はしてあげたい。
すると獣医師は
「まずかかりつけ医にこの事を連絡し、承諾を得て下さい」と言った。
え?どうして?
紹介状は貰わずに独断でここに来たのだ。なぜわざわざ連絡せねばならないのか?
そう問うと、基本的に大学病院では個人病院で出来ない検査や治療を行う。その結果、継続した投薬などが必要な場合は、個人病院にそれを任せるとの事。
なのでいずれ個人病院に戻る事になるので、今の状況を伝えておいた方がスムーズだと言うのだ。
困った。
こんな事なら気まずくても、最初からかかりつけ医に紹介状をお願いして来る方がマシだった。
私は頭の中で様々な理由を考えながら、かかりつけの動物病院に電話した。
急な事で……
後で報告しようと思ったのですが……
何を言っても言い訳がましい。
電話越しで相手がどう思ったのか分からなかった。
まさかペットの世界でも人間関係に悩まされるとは。
いつかまたその個人病院に戻るのが憂鬱。
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