憎めない若者
――前回の続き。
散歩中もいつ電話連絡が来るかと気になり、ずっと片手にスマホを握りしめていた。
だが結局連絡はなく、30分程の散歩を終えて家に戻った。
すると……家の前に運送業者が立っている!
え?電話があるはずじゃなかったの?
私は「すみません!」と叫びながら慌てて走り寄った。
すると業者はホッとしたように、「良かった!お留守だからどうしようかと思っていましたよ」
何てタイミングが悪い。あと少し待っていれば良かった。
電話が無かった事は気になったが、それよりも早く荷物を渡さねば……と急いで家の中に入った。
業者は若い男性で、まるでまだ高校生のような風貌。
人懐っこい話し方で、親しみが持てた。
「回収の他にお届けの商品もあります」と、その若い業者は車から大きな箱を持って来た。
しかし私は何か注文した覚えはない。
そう彼に言うと、「でも配達先がこちらになっていますので……」と困ってる。
仕方なく私がその箱をチェックすると、発送元はプリンターのメーカーだった。
「これって、プリンターを回収する為の梱包資材が入っているんじゃないですか?開けてもいい?」
そう聞くと若い業者は、「いえ、違います。梱包資材は別途こちらで用意するようになっていまして。ほら、こちらに持ってきているんです」と言う。
だがとりあえず届いている箱の中身を確認しましょうと私は言い、箱を開封した。
するとやはり、中には梱包資材が入っており、梱包の方法が書かれた指示書まで入っている。
それを見て困ったのが若い業者。
「うわぁ!変だなぁ。どういう事なんだろう」
だが目の前に折角指示書と資材が届いているのだから、これを使いましょう!と私はまるで、かつての職場の部下に言うかのように、先に進めた。
「そうですね」
若者は答えたものの、次は「僕、こんな資材使うの初めてで、梱包の仕方が分からない」と言い始めた。
何と。今時の若者とはこういうものなのか。
だが彼のキャラクターのせいか、なぜか憎めない。
「ちょっと指示書見せてくれる?」と私は言い、それを見ながら「これをここに入れて」「次はこれをここに止めて」と彼に指示をし始めた。
客に指示されているというのに、若者は素直。
「あ、そうかー」「そうですね!」と明るく答える様子を見ていると、私は息子がいる母とはこういう気持ちか……と想像した。
とても仕事がデキル息子には見えないが、なぜか応援したくなる。
その後、彼は笑顔で去って行った。
それにしても……。
この若者のミスなのか、メーカーのミスなのか。
電話連絡があると言っていたのに無く、届いたあの箱に貼られていた紙を見ると、お届け指定時間が「18時から20時」になっていた。聞いていたのと全く違う!
さらには梱包資材も重複して持って来る始末。
そしてそして、最後に驚いたのが、送料を払うと私が言うと、「メーカー負担なので支払う必要はないです」と言われた。
えー⁉何もかもが違い過ぎる!
結果的に無料で修理に出せたのでいいのだけれど。
メーカーへの不信感がつのる。
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