貯金より美容
案の定、エステティシャンを含めた3人はキャッキャッと話に花を咲かせ始めた。
プライベートでも交流しているらしく、昨日はあそこでどうだったとか、完全にお友達といった雰囲気。
年齢もみな同じぐらいの40代に見える。もっと自分とかけ離れた年齢層なら気にならなかったのに。
私は貝になり、ジッと時計の針が進むのを待った。
そしてようやく時間が経ち、エステティシャンが私の顔まで戻ってくる。
「それでは、パックをはずしていきますね」
そう言い手入れを再開しつつ、「きっとこれからもまた続けて通って頂ければ綺麗になりますよ」と、営業トークをされた。
私は、「綺麗になるとは思うのですが、経済的に難しくて」と言った。これが一番断りやすい。経済的余裕が無いのも事実だし。
するとエステティシャンは、「え?でも旦那様がいるでしょう?頑張って働いてくれてるんだから大丈夫ですよ。それに貯金より美しくなる方が嬉しいじゃないですか」と言った。
大丈夫なんて、何を知って言っているのか。それとも仕事柄こういう返しをするしかないのか。
他の二人の客は私達の会話を静かに聞いている。
場違いな自分が恥ずかしく思えた。
そしてエステ終了後、レジにて支払ったのは10,000円程。これでも知人の紹介で安くなった方らしい。
帰宅時、「では最初なので、明日も来られますか?」と聞かれた。
もし通うなら、毎日通う方がいいらしい。
しかし私には毎日出せる金額ではない。
「考えておきます」
何とか逃げる事が出来た。
やはり私には場違い過ぎる。
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