上手い嘘
――前回の続き。
インターホンが鳴った。休日のインターホン、嫌な予感がした。誰だろう。そっとインターホンの画面を確認すると、そこには近所の主婦が二人映っていた。...
私は予定している日を聞いて即座に言った。
「あ!すみません!その日は実家の親に頼まれた用事があって」
ただの「用事」だけではダメだ。
どんな用事?変更出来ない?と追及される。
先にこちらから理由まで言ってしまうのが綺麗に断る秘訣だと長年この場所に住んで学んだ。
「実家の家を修理するのですが、その業者と打ち合わせをする日なんですよ」
スラスラと口から嘘が出る。
「そう、残念だけど仕方ないですね」
二人はあっさり引いてくれた。
そもそも私などいない方が、皆に気を遣わせなくて良いに決まっている。
二人が去った後、背中が汗でビッショリなのに気付いた。
手を見ると小刻みに震えている。
何て事ないのに。
平気で嘘をつけたはずなのに。
この先も何度嘘を重ねないといけないのかと思うと憂鬱になった。
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