場違いなエステ
知人の紹介でエステに行く事になった。
美顔エステなんて行くのは初めて。
本当は美容にそれ程興味はないし、特に今は気持ちが落ちていてそんな気持ちになれない。
だが知人に頼まれ断る事も出来ず、付合いで行く事になったのだ。
席に座ると、早速椅子を倒されて仰向けになる。
エステティシャンが顔を覗き込み、
「わぁー、荒れていますね!まずは徹底的に肌のお手入れをしていきましょう!」と言った。
明るく甲高い声が馴染めない。
あびるように化粧水を何度も回しかけ、次々と私の顔に何やら乗せられていく。
そうしてしばらく手入れをした後、ベットリと分厚いパックが塗られた。このパックをして30分は待つと言う。
このまま目を閉じて眠ろうか……そう思っていたが、そんな気楽にいられない事にすぐ気付いた。
隣にいたもう一人の客が存在感を出し始めたのだ。
エステティシャンがその隣の客の手入れを始める。
すると、今まで静かに座っていた客が、マシンガンのようにエステティシャンと会話をし始めた。
それも客と店員という関係ではなく、それ以上の仲の良さに感じる。常連なのか。
それにしてもテンションが高い。
二人の楽しそうな会話、笑い声を真横で押し黙って聞いている自分、とても居心地が悪かった。
そして更に、次の予約客がやってきた。
ドアが開き、「こんにちはー!」と声がした途端、エステティシャンと客は二人揃って、「あ、ミキちゃん、遅かったね!」と嬉しそうにその新たに来た客を迎え入れた。
なんだ?次の客も常連か?これはさらに居辛い。
――続きます。
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