お見舞い
ある日、叔母から書留が届いた。
普段付き合いが全くない叔母。どういう事だろう?
不思議に思いながら封筒を開けると、そこには現金と手紙が添えられていた。
内容を読んで納得した。
叔母は先日私が交通事故に遭ってしまった事を母に聞いたらしく、その見舞いに……という事でわざわざ気を遣ってくれたようだ。
叔母の気遣いのある手紙は嬉しかったが、その反面重くも感じた。
そんな大袈裟な事じゃないのに。
こんな事をしてもらったら、どう返せばいいのか分からない。
封筒の中には、見舞いというには多額過ぎる金額が入っていた。
叔母にしてみれば、普段会えない姪に見舞いと小遣いを兼ねてのつもりだろうと思う。しかし素直に受け取れない。
さらに手紙の最後に、「これは気持ちなのでくれぐれも返しなどしないように!」とハッキリ書かれてしまった。
本当に素直に受け取るだけでよいのだろうか。
私はとりあえず礼の電話をかけた。
久々に話す叔母は私の体調を気遣ってくれたり、金の事は本当に遠慮なく受け取って欲しいと言われ、私はただ礼を繰り返すばかり。
そして会話の途中、叔母が気になる事を言った。
「ころりの母から連絡を貰わなかったら、事故に遭った事も知らずにいたわ。良かった連絡してくれて」
え?
まさか?
うちの母から叔母に、娘が事故に遭ったとわざわざ連絡をしたという事?
大した事故でなく、大怪我をした訳でもないのに?
そんな連絡を受ければ、誰だって見舞いをしなければならなくなる。
まるで見舞金の催促ではないか。
私は怖くなった。
母の事だからこの叔母だけでなく、他の親戚にも一人一人電話し、「娘が事故に遭いました」と知らせているのではないか。
どうして自分の中だけで止めておけないのだろう。母はいつもそうなのだ。何かあればすぐに誰彼構わず知らせようとする。
「本当に大した事ないのに……ごめんなさい」と私が叔母に謝ると、叔母は分かっているという風な口ぶりで、
「いいじゃないの。気にせずに甘えておけばいいのよ」と言った。
叔母は私の事もよく分かっているのかもしれない。
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