羨ましい





パートの帰り、デパ地下に寄り総菜売り場で買い物をしていると、トントンと肩を叩かれた。
後ろを振り返ると昔の知人だった。

顔を見て、あ!と思ったものの、名前が出てこない。
確か……えっと……

私の様子を見て思い出せないのを察したのか、彼女が言った。

「畠です。以前〇〇で働いていましたけど……覚えています?」

「あぁ!そうですよね!覚えています!ごめんなさい」

私は慌ててそう言った。

「わぁー、久しぶり。元気でした?」

彼女と一緒に働いていたのは、もう15年以上も前の事だ。
その頃私が働いていた会社に、彼女は派遣社員として短期間働いていた。

半年ほどの期間であったが、仕事で私と関わる事が多かったのと、なぜか気が合ったので休憩時間などよく雑談をして笑い合った。
正社員と派遣社員という事もあり、お互い変な気の張り合いも、探り合いもない所が良かったのかもしれない。

この頃の彼女は子作りを優先したいから、正社員で働くつもりはないと言っていた。
同年代でありながら、まだまだ仕事の事で頭がいっぱいだった私は、早く子供が欲しいと焦る彼女の気持ちに共感出来なかった。

そんなに子供って欲しいものなのかな?

漠然とそう思っていたように思う。
今となれば、あの頃彼女のように計画的に人生を進めれば、今頃私も母親だったかもしれないのに。

彼女はその後、希望通り妊娠し、派遣期間を満了した。
それからプライベートで会う事もなく、きっと母として幸せな人生を送っているのだろうと想像していた。


「仕事帰り?」

そう聞かれて、「えぇ、まぁ」と曖昧に答えた。

「やっぱりね。ころりさんはきっと今でもバリバリ仕事されていると思っていましたよ」

「え、そんな事ないですけど……」

気まずい。今の私は半引きこもり状態だというのに。
だがまさかその後鬱病になったなど知る由もない彼女は、

「私もころりさんみたいにずっと働けば良かったって後悔しているんですよ」と言った。

そんな事はない。私だってあれからまともに働いていない。そう言えなかった。

「そんな事ないでしょう。子供さん元気?大きくなったでしょう?」と私は話を変えた。

すると、「もう高校生で手がかからないけどお金はかかって大変」と言って彼女は笑った。

そして、「やっぱり女の人でも仕事は続けるべきよね。今の私なんて資格も経験もなくて、働こうと思っても雇ってくれるところなんて無いもの」と続けた。

「でも子供がいるって、それだけで幸せじゃないですか」と私が言うと、

「子供なんて家を出て行ったら終わりよ。私は今も仕事をされているころりさんの方がずっと羨ましいわ」と言われてしまった。

最初に「私もずっと働いていなかった」と言えなかった事で、最後まで誤解させたままになった。
私のちっぽけなプライドがそうさせたのか。子供もおらず、仕事もしていなかったと言うと、同情されそうで嫌だったのか。

そう言えば彼女は一言も「子供はいるの?」と聞かなかった。
それはきっと彼女が私の何かを察し、気遣っての事だと思う。

彼女は私の事が羨ましいと何度も繰り返していたが、ああ言いながらも彼女の方がずっと理想通りの人生を歩んでいるように見えた。
私は今でもグチグチと人間関係に悩み、何年経っても成長せず小さな事で悩んでばかり。

彼女に別れを告げた後、自分がちっぽけに感じた。
羨ましいと感じたのはきっと私の方だと思う。




***Ranking***
にほんブログ村 家族ブログ 舅・姑・小姑へ
にほんブログ村 主婦日記ブログ ひきこもり主婦へにほんブログ村 主婦日記ブログ 40代主婦へ



***another blog***






関連記事
Posted byころり
よく読まれている記事