有情
以前、一緒に働いていた人が話していたのを思い出した。
「私、義母に嫌わているの」
そう言うその女性は顔に大きな火傷の跡があった。年齢は40代。丁度今の私ぐらいの年齢だった。
その火傷の跡はあまりにも目立ち、申し訳ないが最初の頃には顔を見るのも、どこに視線をおけばいいのか気を使う程だった。
だが本人は全く気にしていない。
もしくは気にしてない風に見せるのが上手い人だった。
明るく「この顔だと化粧しても無駄だから楽だわ~ワハハ!」と笑っていた。
自虐的な事を言っても相手に可哀想だと思わせない。
私達はいつの間にか、彼女のその火傷の跡が全く気にならなくなった。
「義母はね、私の事気持ち悪いんだって」彼女は言った。
酷い。そんな事を言う人がいるなんて。
「この顔がね、嫌なんだって。厄介な人でしょう?」
さすがにその話を聞いた時には、私達は言葉に詰まった。なんて酷い義母。私なら絶対付き合えない。会いたくない。
彼女は続けた。
「最近義母は体調が悪いんだけど、私には死んでも介護されたくないって言うの」と言って、フフフと笑った。
嫌な義母だと思うが介護しなくてよいなんて、それはそれで割り切ってしまえば楽でいいではないか。
同僚の一人が彼女に言った。
「介護しなくていいんだから、色々言われても気にしないしかないですよね」
すると彼女は「え?」と驚いたような顔をして、
「私は介護するつもりよ。義母がどう言おうが、介護はさせてもらいたいわ」
私は信じられなかった。
自分の親ならまだしも、配偶者の親を介護したいなんて。さらに嫌わていると分かっているのに介護したいなんて。
彼女はその場だけで恰好つけた訳でも、理想を語った訳でもない。
彼女はそういう人だった。その場で話を聞いていた誰もが、「この人なら本当に介護するだろう」と思ったと思う。
何年か経ち、久々に同僚と会った時に彼女の噂を聞いた。
その後義母と同居し、最期まで介護したらしい。
どうしてそこまで出来るのだろう?
出来ない自分が非情に感じる。
今、私はその頃の彼女と同年代になった。
だが自分の考えを押し付ける自己中心な義母を受け入れる事が出来ない。そして自分は非情なのか?と自問自答し一人ストレスをためている。
相手が間違っていても受け入れる。
心からそんな人になれれば、自分が楽になれるのかもしれない。
嫌な義母だと思うが介護しなくてよいなんて、それはそれで割り切ってしまえば楽でいいではないか。
同僚の一人が彼女に言った。
「介護しなくていいんだから、色々言われても気にしないしかないですよね」
すると彼女は「え?」と驚いたような顔をして、
「私は介護するつもりよ。義母がどう言おうが、介護はさせてもらいたいわ」
私は信じられなかった。
自分の親ならまだしも、配偶者の親を介護したいなんて。さらに嫌わていると分かっているのに介護したいなんて。
彼女はその場だけで恰好つけた訳でも、理想を語った訳でもない。
彼女はそういう人だった。その場で話を聞いていた誰もが、「この人なら本当に介護するだろう」と思ったと思う。
何年か経ち、久々に同僚と会った時に彼女の噂を聞いた。
その後義母と同居し、最期まで介護したらしい。
どうしてそこまで出来るのだろう?
出来ない自分が非情に感じる。
今、私はその頃の彼女と同年代になった。
だが自分の考えを押し付ける自己中心な義母を受け入れる事が出来ない。そして自分は非情なのか?と自問自答し一人ストレスをためている。
相手が間違っていても受け入れる。
心からそんな人になれれば、自分が楽になれるのかもしれない。
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