老いる不安
――前回の続き。
痛む腹を押さえながら、ネットで検索する。
「胃腸科、休日、夜間、診察」
まだ外は明るい時間だったが、多くの病院は診察時間外だった。
何件か電話し、ようやく繋がったところに今から行く事を伝え、診察をお願いした。車で30分程の距離。
今から思えばたとえ一人で行くにしても、それは当然タクシーを使うべきだった。
だが私は何も考えず、自分の車を運転して行ってしまった。
家を出てからもその痛みは全く治まらず、グーッ!と刺すような痛みがきたと思ったら、しばらく痛みが引く、その繰り返し。
そうしてしばらくすると、痛みが引いた瞬間に、物凄い眠気が襲ってきた。どうにもならないぐらい眠い。
だが再び痛みが刺し込むと、ハッと意識を取り戻す。
それでも私は車を停車するでもなく、ひたすら目的地を目指した。あと少し、あと少しと手に汗を握りながら。
今思うと本当に恐ろしい。
いつどんな事故を起こしていても不思議ではなかった。
あんな状態で自分一人で何とかなると思う事が間違っている。他人に迷惑をかけたくないと思った事で、結果的にもっと恐ろしい事故で見知らぬ人に迷惑をかけるところだった。
それでも今回は何とか無事病院に到着する事が出来た。
病院の中に入るとすごい人。かなり混んでいる。
この時間に診察している病院が少ないからか、皆この病院に集中してしまっているようだ。
私は電話で事前に連絡していたから、多少は診察時間を前後してくれるかと思ったが、全くそんな事はなく、1時間程待合でひたすら痛みに耐えた。
ようやく自分の名前が呼ばれ、診察室に入った瞬間、真っ先に私は言った。
「我慢出来ない程痛いのです!とりあえず痛み止めを打ってもらえませんか?」
ずっと昔、胃か腸が痛くなった時、痛み止めの注射をしてもらった記憶があったのだ。確かその時は、その注射をすれば一瞬で痛みが消えた。その時も根本的に原因が治った訳でないのは分かっている。だがそれでもいい、とりあえず今、この痛みを取って欲しい!もう何時間もこの痛みに耐えて体力が消耗しきっていた。
だが医師は言った。
「簡単に痛み止めを打つ事は出来ますが、それは根本的に原因を治す事にはなりませんから、おすすめしません」
分かっています!だけどもう耐えがたいのです!朦朧とさえするのです!
そう私は訴えたが、医師は
「それに痛み止めを打ってしまうと、胃腸の動きそのものも止めてしまうのです。だから胃腸にも良くない」
と言い、その後も薬と胃腸の関係をダラダラと説明し結局、「注射は出来ません」と言われてしまった。
そして胃カメラもその場ですぐに出来るはずもなく……。
一体ここまで何をしに来たのか……虚しくなった。
さらに、検査もしていないのに安易に薬は出せませんと言われ、結局薬もなし。
私は何も治療を受けず、そのまま手ぶらで帰る事になった。相変わらず胃腸が痛くて朦朧とするのに。
さすがにすぐに帰る気力がなく、私は待合で壁にもたれ掛かり目を閉じた。
それから1時間程経っただろうか。
繰り返す痛みが弱くなってきた事に気付いた。吐き気も収まってきた。
その後、運転して自宅に戻ったが、ゆっくりゆっくり痛みは引いていった。家に到着し、すぐに毛布に包まって眠った。
目覚めた時には痛みは消え、その後その痛みがくる事もなかった。
疲れた日だった。
不安な日だった。
この事で私は、老いて行く不安を実感した。体調が悪くなっても、自分で何とかしなくてはいけない。そして病院から帰宅してもその事を聞いてくれる家族はもういない。そんな日がくるのだと。
「我慢出来ない程痛いのです!とりあえず痛み止めを打ってもらえませんか?」
ずっと昔、胃か腸が痛くなった時、痛み止めの注射をしてもらった記憶があったのだ。確かその時は、その注射をすれば一瞬で痛みが消えた。その時も根本的に原因が治った訳でないのは分かっている。だがそれでもいい、とりあえず今、この痛みを取って欲しい!もう何時間もこの痛みに耐えて体力が消耗しきっていた。
だが医師は言った。
「簡単に痛み止めを打つ事は出来ますが、それは根本的に原因を治す事にはなりませんから、おすすめしません」
分かっています!だけどもう耐えがたいのです!朦朧とさえするのです!
そう私は訴えたが、医師は
「それに痛み止めを打ってしまうと、胃腸の動きそのものも止めてしまうのです。だから胃腸にも良くない」
と言い、その後も薬と胃腸の関係をダラダラと説明し結局、「注射は出来ません」と言われてしまった。
そして胃カメラもその場ですぐに出来るはずもなく……。
一体ここまで何をしに来たのか……虚しくなった。
さらに、検査もしていないのに安易に薬は出せませんと言われ、結局薬もなし。
私は何も治療を受けず、そのまま手ぶらで帰る事になった。相変わらず胃腸が痛くて朦朧とするのに。
さすがにすぐに帰る気力がなく、私は待合で壁にもたれ掛かり目を閉じた。
それから1時間程経っただろうか。
繰り返す痛みが弱くなってきた事に気付いた。吐き気も収まってきた。
その後、運転して自宅に戻ったが、ゆっくりゆっくり痛みは引いていった。家に到着し、すぐに毛布に包まって眠った。
目覚めた時には痛みは消え、その後その痛みがくる事もなかった。
疲れた日だった。
不安な日だった。
この事で私は、老いて行く不安を実感した。体調が悪くなっても、自分で何とかしなくてはいけない。そして病院から帰宅してもその事を聞いてくれる家族はもういない。そんな日がくるのだと。
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