40代のエステ体験
「じゃあこれ無料券。行ってきてね」
酒家さんにその券を渡され、私は「ありがとう」と受け取るしかなかった。
全ては私の優柔不断なこの性格が原因だ。
ある日仕事中に酒家さんに話しかけられた。
酒家さんと二人きりの部屋に移動してから、彼女のおしゃべりは増すばかり。仕事中であろうが休憩時間であろうが関係なし。一日中話している。二人きりなので返答するのは私しかおらずストレスがたまる。
それでも何とか彼女の機嫌を損ねないように、会話を合わせて適当に返答していた。
彼女は言った。
「私さぁ、エステの脱毛に行きたいんだよね。ころりさん、行った事ある?」
無いと答えると、彼女はアラフォーだからこそ美に気を使いたいという話を始めた。
「オバサンがボサボサの髪とか、ムダ毛が目立ってるとかみっともないでしょう?」
確かにそうかも。私がそう答えると、彼女は嬉しそうに、「やっぱり?そうよねー」と嬉しそう。
確かに美に気を使うのも大切かもしれないが、正直私はエステに行く程興味はない。他人の手を借りず、自分の出来る範囲で綺麗にするぐらいで十分だ。
だがエステに行こうとしている彼女に調子を合わせる為に、「そうよね」「いいわね」と彼女が喜びそうな返事ばかりしていた。
すると数日後、彼女は「行ってきたわよ。エステ!」と私に言った。
なんて行動が早いのだろう。凄い。
どうだった?と私が聞かなくても、彼女はどんどんその様子を説明してくれる。
私も全く未知の世界の為、それなりに興味を持って話を聞いた。
彼女の話によると、昔のエステと違ってすごく今は早くて簡単。痛くもなく、価格も安い。そして何よりエステティシャンの方が優しくて癒されると言う。
「こんな事ならもっと早く行っておけば良かったと思うぐらい」と彼女は満足気。
「良かったわね」と私が言うと、彼女は言った。
「それでね、ころりさんも一緒に行かないかなと思って!この前話した時も興味がありそうだったし」
……しまった。
――続きます。(▶脱毛体験。体に残る薬はNG)
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