憂鬱
――前回の続き。
診察台の上で私はジッと目を閉じた。
「早く終われ、早く終われ」
そう心の中で願いながら、ひたすら検査が終わるを待った。
何度経験しても子宮の検査は特に苦手。もし出産を経験していたら、こんな事ぐらい平気になるのだろうか?と、以前誰かに言ってみたら、「それは関係ないわ。嫌なものは嫌」と返ってきた。
「いつもより検査が長いな……」
そう思いながら手を握りしめると、カーテンの向こうで医師が言った。
「あまり良くないですね……隣のモニター見えますか?」
横を見ると自分の子宮の中が映ったモニターがある。
医師は「三か所に子宮筋腫が出来ているのですが、その中の一つが大きめですね」と言った。
私は子宮筋腫と聞いて、それ程驚かなかった。
私ぐらいの年齢になると、多くの人が持っていると聞く。自分で気付いていない人も多いだろう。
なので嫌な事ではあるが、ついに私にも出来たか……という様な気分だった。
長い検査を終え、医師に改めて説明を聞く為、別の診察室に入った。
そこで医師は事細かく日常の様子を質問してきた。
生理中の出血の量は?痛みは?期間は?オリモノの色は?お腹の張りは?貧血の症状は?
他にもあったような気がするが、色々と質問されているうちに、そんなに深刻なの?と不安になってきた。
そして医師は
「とりあえず今日は貧血の検査をしましょう」と言い、「その結果が悪ければ薬で様子を見るか手術をするか相談しましょう」と言った。
手術⁉
いきなり思わぬワードが出た為、急に吐き気がした。
無理無理。今の私には無理だ。
考えただけで耐えられそうにない。精神的に。
年齢と共にどこも弱ってくるのは当然で、いつかは入院や手術という日が来るのだろうが、それに耐えらえるのだろうか?という不安がいつまでも消えない。鬱になる以前ならそれ程思い悩む事もなかったのに、今の私には全く自信がない。
最近は精神的にも落ち着いてきたと思い込んでいたが、こんな風に非日常な事があるといっきに心が不安定になる。
とりあえず手術せずに済むよう薬で治療できる事を願う。
これで検査を終えたい気分だったが、まだこの後には乳がん検診が待っていた。
あぁ、憂鬱だ。
――――――――続きます。
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