ランチの相手
あれから一週間後、酒家さんとランチに行った。
その日が来るまで憂鬱で憂鬱で。
もう何年も女性と二人で食事なんてしていない。職場の休憩室ならまだしも、プライベートで外で会うなんて、一体何を話せばいいのか。
どのタイミングで帰ればいいのか……私は会う前からそんな事ばかり考えていた。
相手が苦手な酒家さんだから憂鬱さが増しているのもあるが、もし相手が他の女性だったとしても私は気分が重いだろう。
「友人が欲しい」と何年も思い続けてきたが、想像するだけの期間が長すぎた。
いざ女性と関わろうとすると構え過ぎて億劫でしかない。
それにしても酒家さんがどうして私を誘ったのかが気になった。
以前手紙を渡された時のように、何か嫌な事を言われてしまったら……。
待ち合わせ場所に行くと、酒家さんは職場で会うより更にテンションが高かった。
「うわぁー!美味しそう!ね?ね?写真撮ろう!」
「子供が一緒だとなかなかこういう店に来られないからさー」
心の奥では酒家さんを疑いつつも、私は酒家さんの機嫌を損ねないように調子を合わせた。
酒家さんは満足気に目の前の前菜に手を伸ばした。
私は食事に興味がなかった。
食事は料理の内容ではなく、一緒に食べる相手により美味しくなるものだと思う。
しかし会話が途切れないように、明るく元気に見えるように、私は精一杯無理をしていたように思う。
それは酒家さんがいつも「陰気な人が嫌い」と繰り返し言っているから。
酒家さんに好かれなくてもいいと頭では分かっているのに、彼女を目の前にすると彼女が気に入るような人間になろうとしてしまう。
もう以前のような険悪な関係になりたくない、嫌われるのが怖い。
そんな無理をしている私に彼女はきっと気付いていない。
この日も終始、職場の人達の悪口を言っていた。
私は適当に合わせ、「そうかもね」と繰り返す。
嫌だ嫌だ。こんな自分が嫌いだ。
酒家さんは言った。
「私達って気が合うと思わない?何でも話しやすいし」
いつからそうなってしまったのだろう。
私は曖昧に笑った。
「そうかな」
心が重い。
食事は料理の内容ではなく、一緒に食べる相手により美味しくなるものだと思う。
しかし会話が途切れないように、明るく元気に見えるように、私は精一杯無理をしていたように思う。
それは酒家さんがいつも「陰気な人が嫌い」と繰り返し言っているから。
酒家さんに好かれなくてもいいと頭では分かっているのに、彼女を目の前にすると彼女が気に入るような人間になろうとしてしまう。
もう以前のような険悪な関係になりたくない、嫌われるのが怖い。
そんな無理をしている私に彼女はきっと気付いていない。
この日も終始、職場の人達の悪口を言っていた。
私は適当に合わせ、「そうかもね」と繰り返す。
嫌だ嫌だ。こんな自分が嫌いだ。
酒家さんは言った。
「私達って気が合うと思わない?何でも話しやすいし」
いつからそうなってしまったのだろう。
私は曖昧に笑った。
「そうかな」
心が重い。
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