あのゴミは誰のもの?犯人捜し
朝からインターホンを鳴らす音で目が覚めた。時計を見ると9時半。
未だに私は昼夜逆転が改善していない。派遣に行く日はなんとかリセットしているが、それ以外の日は相変わらず朝が遅い。というか常に夜の寝つきが悪いのでどうしても朝起きるのが辛くなる。
しかし世間の人から見れば朝の9時半に寝ている主婦なんて自堕落でしかない。
インターホンの音に気付きつつも、私は居留守を使おうかと考えた。しかしすぐに、車が駐車してあるので在宅なのは気付かれていると思い直し、諦めて起き上がった。
インターホンの通話ボタンを押し「はい」と答えると、「あ、ころりさん?栗山です。朝早くからごめんなさいね、ちょっと話があるんですけど」と近所の主婦の声が聞こえた。
「すみません、ちょっと今出られなくて……。後ですぐにこちらから家にお伺いしていいですか?」と私は答えた。寝起きのこの姿ではとても玄関先に出られたものじゃない。
だがその主婦は引かず、「いえいえ、すぐ済むの!ちょっと玄関に出てきてくれるだけで。3分で済むわ」と押しが強い。そんなに急ぐ用事って一体何なのだ?
私は少し待ってもらうように伝え、慌てて顔を洗って洋服を着替えた。髪はボサボサだったが整えてる余裕はない。
「すみません、お待たせしました」と言いながら玄関を開けると、栗山さん一人だと思っていたのが、目の前には栗山さんの他にも近所の主婦が二人立っていた。
三人の視線が痛い。
一目で「今寝起きです」と分かるであろう顔をしている私。規則正しく生活している主婦達から見れば、情けなく思われているのではないだろうか。
「いえいえ」と栗山さんが言い、要件を話し始めた。
「最近公園にゴミが置いてあったの。それも木の陰に隠すように。わざわざあんな所に遠くから置きにくる人はいないだろうから、あのゴミを置いた人はきっと近所の人だと思うんです。それで、みんなに聞いたんだけど誰も置いていないって言っているから……ころりさん、置いたりしていないですよね?」
何だこれは?もしや疑われてる?いや、皆に聞いて回っているんだ、気にしない……と自分に言い聞かせたが、朝から唐突に質問されたのと、3人の主婦の視線が私に集中している事で息が詰まった。
「全く知らないです。公園に行くことさえないですから」と私は答えた。
「まぁ、そうですよねぇ。確かにころりさんって公園で見かけた事ないですしね」と栗山さんは一応納得した様子だった。
「それにしても、あんな場所にゴミを置くってどういう神経してるのかしらね?子供達が触ったら危ないし、不衛生じゃない?常識がないわ!」と栗山さんと他の二人は興奮気味に話していた。
私は曖昧に相槌を打っていたが、内心そこまで腹が立つ感情が全く分からなかった。
確かに公園にゴミを捨てるなんて非常識だが、犯人捜しまでする程の事なのだろうか?
気付いた人が所定の場所に捨てて終わり……ではダメなのか?
3人は「お邪魔しましたぁ」と言いながら去って行った。
はぁ……朝から気分が重い。
特別嫌な事を言われた訳ではないが、近所の人――特に同年代の女性と話す時には気を張るからか、疲れる。せめてあんな風に3人ではなく一人で来てくれればいいのに。
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