文通





私が小学生の頃、近所のマンションに香ちゃんという女の子がいた。
幼いながらも顔立ちがハッキリしていて、近所でも「将来美人になるね」と評判の可愛らしい女の子だった。

私と香ちゃんは同級生という事もあり、ある時期は毎日一緒に遊んでいた。彼女は大人しい私を引っ張ってくれるような活発な性格で、私の子供時代の記憶の中では数少ない楽しく過ごせた友達だったように思う。

だが香ちゃんの父親は転勤族で、3年ごとに全国を転々とするような家族だった。
私と香ちゃんが過ごしたのも2年と少し。小学校高学年になる頃に、香ちゃん一家はまた県外に引っ越してしまった。

それでも私と香ちゃんの交流は続いた。今では珍しいだろうが、その頃には文通というのが流行っていた。携帯もパソコンもない時代。月1回ぐらいのペースで香ちゃんから手紙が届くのが楽しみだった。

香ちゃんは色んな地域に引っ越しをする。
手紙には「また引っ越ししました。今度は寒くて雪かきが必要です」といった内容から、「今住んでいる場所は冬とは思えない暖かさです」という内容まで、色んな地域の話を聞けるのが楽しく、経験豊富な香ちゃんが羨ましかった。

そんな文通は私が結婚する頃まで続いた。
今から思うとよく続いたなぁと思う。どちらも文章を書くのが好きだった事や、お互い真面目だった事が大きいのだろう。

しかし私が覚えているのは小学生の香ちゃんの顔だけ。実際、大人になった香ちゃんの顔や、具体的な日常生活はよく分からなかった。
というのも、子供の頃にはもっと日常生活の事を詳しくお互い書いていたのだが、いつの頃からかその手紙の内容は読んだ本の感想や、オススメの映画情報などがメインとなっていた。お互いのプライベートな事は書かなくなっていた。

私が結婚した後、なんとなく手紙の交流は無くなってしまった。今では年1回の年賀状のやり取りのみ。それも最初の頃には最近はまっている趣味などを書いていたり、「また手紙を書くね」といった事も書いていたが、今では毎年「お元気ですか?」の決まり文句一行だけ。

それでも年賀状をやめる事なく続けているのがお互いの真面目さというか。




だが今年、香ちゃんから喪中ハガキが届いた。
父親が亡くなったらしい。

私は驚いた。
確か数年前にも香ちゃんから喪中ハガキが届き、その時は母親が亡くなっていた。その時も「こんな若くて母を亡くすなんて、香ちゃん辛いだろうな」と思ったのだが、今回の事で両親共に亡くしてしまったんだと思うと、胸が痛んだ。

香ちゃんは未婚だ。
手紙や年賀状からは、結婚した様子は全くなかった。
20代前半でまだ手紙のやり取りをしていた頃に、少しお互いの仕事の事について書いた事があるが、香ちゃんは大学を卒業して1年程働いていた様だが、その後は家で家事手伝いをしていると書かれていた。今後働くつもりはないと。

香ちゃんの家は裕福で、財産で生活していけそうな家庭だった。香ちゃん自身も働くという事に興味はないらしい。

だがこの喪中ハガキを見て思った。両親を亡くし、仕事もしていなかったら、どんな生活をしているのだろうと。
私と同じように子供もいない。

私は日々、何を目標に生きていけばいいのか?何の為に生きているのか?モヤモヤと考えながら暮らしているが、香ちゃんはそんな事考えもしないのか?聞いてみたい気持ちになる。

今会ってみたら私達はまた友達になれるのだろうか?
今の香ちゃんと話してみたい。




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Posted byころり
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