孤独でも逃げない人

久々にパート先に出勤した。
前回の出勤日から日数が経ち過ぎてしまい、この時期どんな洋服を選べば良いのかしばらく悩んだ。9月なのにいかにも夏服だと遅れている気もするし、かといって秋の装いには暑過ぎる。
最近はどちらかの実家に行く以外はますます家に籠る時間が増え、服装一つでさえ世間の様子が分からなくなっていた。
そして久しぶりの出勤というのはかなり憂鬱になる。
普通の人でも土日の休日があると月曜日に出勤するのが嫌になると思うが、それ以上に長期間職場に行っていない為、嫌さも倍増。
私の居場所があるのだろうか。
自然と挨拶や会話が出来るだろうか。
そんな事ばかり考えながら出勤した。
通勤途中、例の50代のパートの人の事が脳裏に浮かんだ。
前回パート先に行った時、新しく採用されたパートの女性がいた。...
久々にパート先に行くと、まだあの50代女性がいて驚いた。..
絶対に辞めている。まだ続けている訳がない。そうあって欲しい。
私はなぜか彼女が辞めてしまっている事を望んでいた。
あんな虐めにあっている姿を見るのが辛いのか…自分でもよく分からなかった。
だが出勤してみると、彼女はまだそこに居た。
雰囲気は相変わらずで、周囲の女性達も彼女を無視する事が当たり前になっているように見えた。
仕事中、休憩中、誰も彼女に話しかけない。
彼女自身も何か心に決めているかのように、ギュッと口を結び、黙々とただパソコンを見つめて仕事をし、休憩中は俯きスマホから目を離さなかった。
以前は大人しそうな物静かな人…という印象だったが、今では近寄り難い怖さみたいなものを感じた。
それに比べて私の方は以前と変わらずオドオドビクビクしてしまう。
人の機嫌を伺わない!と決めてきたはずなのに、つい下手に出た話し方をしたり、何か話を振られれば、あの「凪のお暇」のように「分かりますー」と意味も分からず合わせてしまう。あぁ、変われない。
それでも心のどこかで、無視されなくて良かった、何とか周囲に紛れて一日過ごせた…と安堵している自分もいた。
私が退社する時、あの50代パート女性も黙々とデスクの上を片付けていた。
そして小さな声で、「…失礼します」と言い部屋を出て行った。誰にも聞こえていないのか、聞こえたが無視しているのか…誰一人として彼女に「お疲れ様」と声をかける人もいなかった。
彼女に続き、私も皆に声をかけた。「…お先に失礼します」
「あ、お疲れ様!」
そう何人か返してくれ、ホッとした。
それでも帰宅途中、心がザワザワした。
50代パート女性はどんな対応をされても逃げる事なくこの職場に居続けている。
それに比べて私はやはり顔色を伺いながら出来るだけ家に引きこもろうと逃げている。
人と上手く関われなくても逃げない人もいる。
それを見せつけられた気分だった。
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