世渡り上手
派遣先にいる50代の新人パート。
ある日の夕方、仕事を終えた私がエレベーターから降りると、少し前方にその女性が歩いていた。
いつも私とは終業時間が違うのだが、今日は残業していたのだろか。
スタスタと速く歩いてくれればいいのに、どうやら彼女は歩くのが遅いのか、同じ方向に歩いているとすぐに私が追いついてしまった。
「お疲れ様です」
私は声をかけた。
特に仲良くなろうとしている訳ではないが、いつも一人でいる彼女が心のどこかで気になっていたのも確か。
「あ、お疲れ様です」と彼女は私に会釈した。
そのまま歩く方向が一緒だった為、しばらく並んで歩いた。
「仕事、慣れてきましたか?」
何か話題を……と思い、取り敢えず話しかけてみたが、派遣という立場のくせに上から目線だと思うだろうか?と少し後悔した。
「う~ん、どうでしょうか」
と彼女は言って苦笑した。そして続けた。
「仕事はまだいいのですが、何だか皆さんに嫌われているような気がして」
ドキッ!
いきなりそんな確信に迫る話題をされるとは。サラリとそれを口に出せるのが意外だった。
「そんな事ないと思いますよ」
ここでも白々しい言葉を吐いてしまう私。だがどう返していいか分からなかった。
しかし次に彼女が言った言葉に驚いた。
「別にいいんです、嫌われても私。だって私も彼女達の事、嫌いですから。凄くやり辛い人達だと思いませんか?自己中心的過ぎますよね?」と彼女は私に言った。
「さぁ……よく分かりませんけど」と私は逃げた。こんな風にどんどん思いをぶつけられるのは苦手だ。いつもの大人しく地味な彼女とは別人の様だった。
確かに彼女にとっては鬱陶しい同僚達だろう。やり辛いと思う気持ちは分かる。
だが私は、今目の前にいる彼女の強い口調、人を恨むようなオーラも苦手だった。
そんな私に彼女は気付いているのかいないのか、関係なく一人で話し続けた。こんな職場にしがみついている彼女達の方が可哀想だとか、自分は辞めようと思えばいつでも辞められるとか。
私は圧倒され、ただただ早く彼女と別れたかった。すると急に彼女が言った。
「ころりさんって……世渡り上手ですよね」と。
私は一瞬固まった。その言葉に嫌な含みを感じた。
「ころりさんって、いつも無口だけど適当に誰とでも合わせられるでしょう?だから皆も攻撃しないし。いつも見ていて上手いなーって思うんです。世渡り上手だなって。」
私が?とても自分ではそうは思えないが、彼女からはそう見えていたらしい。
「私はそうなれませんけど」と彼女は言った。あたかも「そうならない事に誇りを持っている」と言わんばかりの視線を感じた。
彼女は私が想像していた性格ではないように思う。その後彼女と別れた後も心のモヤモヤが残っている。
ここでも白々しい言葉を吐いてしまう私。だがどう返していいか分からなかった。
しかし次に彼女が言った言葉に驚いた。
「別にいいんです、嫌われても私。だって私も彼女達の事、嫌いですから。凄くやり辛い人達だと思いませんか?自己中心的過ぎますよね?」と彼女は私に言った。
「さぁ……よく分かりませんけど」と私は逃げた。こんな風にどんどん思いをぶつけられるのは苦手だ。いつもの大人しく地味な彼女とは別人の様だった。
確かに彼女にとっては鬱陶しい同僚達だろう。やり辛いと思う気持ちは分かる。
だが私は、今目の前にいる彼女の強い口調、人を恨むようなオーラも苦手だった。
そんな私に彼女は気付いているのかいないのか、関係なく一人で話し続けた。こんな職場にしがみついている彼女達の方が可哀想だとか、自分は辞めようと思えばいつでも辞められるとか。
私は圧倒され、ただただ早く彼女と別れたかった。すると急に彼女が言った。
「ころりさんって……世渡り上手ですよね」と。
私は一瞬固まった。その言葉に嫌な含みを感じた。
「ころりさんって、いつも無口だけど適当に誰とでも合わせられるでしょう?だから皆も攻撃しないし。いつも見ていて上手いなーって思うんです。世渡り上手だなって。」
私が?とても自分ではそうは思えないが、彼女からはそう見えていたらしい。
「私はそうなれませんけど」と彼女は言った。あたかも「そうならない事に誇りを持っている」と言わんばかりの視線を感じた。
彼女は私が想像していた性格ではないように思う。その後彼女と別れた後も心のモヤモヤが残っている。
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