一匹狼さん
犬を連れて近所を歩いていると、近所の女性が子連れで歩いて来た。
彼女は一匹狼さん。
私と同時期にこの地域に引っ越して来たが、全く近所の人と馴染もうとしなかった。
私が言えた立場ではないが、それにしても大人しくて仲間に入れないとか、子供がいないから会話が合わないとかの次元ではなく、「私は他人に興味がないのです」というオーラが全身から放たれていた。
当然近所からは陰口を言われる。
近所の人と仲良くはない私の耳にまでその悪口は聞こえてきた程なので、かなり多くの人から嫌わていた。だが本人は全く気にしていない様子だった。
私は内心彼女がいる事で救われていた。
そこまで堂々と一匹狼を貫いてくれる人がいると、私のような中途半端な、一人でいたいのに孤独な事を悩んでいる人間からすれば安心の存在となる。
しかしあれから何年か経ち、彼女は変わった。
この日も彼女が子供と手を繋いで私の横を通り過ぎようとした。その時、
「可愛いですね、お散歩ですか?」と声をかけられた。
あの一匹狼さんが?自分から声をかける?
以前なら考えられない事だ。それも声が優しくなっている。
「えぇ、そうです」と私が答えると、「ほら、ワンちゃん可愛いね」と隣にいる息子に声をかけた。少年も「うん!可愛いーっ」と言って私の愛犬を撫でた。
「すみません、ありがとう」と笑いながら彼女は息子と去って行った。
その優しい口調と笑顔はもう一匹狼ではなかった。
すっかり社交的な母親になっていた。
その証拠に、最近では彼女も井戸端会議に参加している。
私は孤独感に包まれた。
いや、孤独感というより、取り残され感。
彼女は成長しているのに、私は何一つ変わっていない。
この日も彼女が子供と手を繋いで私の横を通り過ぎようとした。その時、
「可愛いですね、お散歩ですか?」と声をかけられた。
あの一匹狼さんが?自分から声をかける?
以前なら考えられない事だ。それも声が優しくなっている。
「えぇ、そうです」と私が答えると、「ほら、ワンちゃん可愛いね」と隣にいる息子に声をかけた。少年も「うん!可愛いーっ」と言って私の愛犬を撫でた。
「すみません、ありがとう」と笑いながら彼女は息子と去って行った。
その優しい口調と笑顔はもう一匹狼ではなかった。
すっかり社交的な母親になっていた。
その証拠に、最近では彼女も井戸端会議に参加している。
私は孤独感に包まれた。
いや、孤独感というより、取り残され感。
彼女は成長しているのに、私は何一つ変わっていない。
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