オバサンの心
派遣先の社長が、「仕事を手伝ってもらう」という名目で、若い女性を連れてきた。
実際は仕事などせず喋っているだけ。
どういう関係なのか知らないが社長曰く、「時々食事をご馳走してやる関係」らしい。
その言い方、話の内容から、なんとなく下心アリの関係だと分かった。
オジサンが20代の若い女性を可愛がる関係が、正直気持ち悪かった。頭が固いんだろうか?私。
その彼女を最近よく連れてくる。
とても美人で可愛らしい女性。
だが、少し派手っぽくて、何より元気でおしゃべりでノリがいいタイプ。
最初の頃は、興味がないとはいえ、一緒にその場に居合わせるオバサンとしては、話しかけたり、愛想良くしなくては……と思っていた。
だが何度も来るうちに、私の目の前で手と手を握り合い体を触れ合っている社長とその女性に圧倒されドン引き。
「優しいオバサン」を演じるどころではない。
「社長可愛~い!」
「キャハハッ」
私と彼らしかいない事務所。その中で彼女の甲高い声だけが響き渡る。
さらに外回りから戻った男性スタッフにも彼女は体を寄せ、男性達も満更でもない様子。
何だか私、すっかり疎外感。
優しく話しかけなくてはなんて、上目線で構えていた自分が情けない。
私はその場でどう居ればいいのか分からず、ただ黙々とパソコンを打ち続けた。
彼女にしたら、私はとても嫌なオバサンに見えただろう。
男性達からも、感じ悪く思われただろう。
もしくは、オバサンのひがみの様に思われたかと思うと悔しい。
社長が彼女に、「欲しいって言ってたバッグ、予約しておいたよ」と言い、「ウホー!ウレピー!」と喜ぶ彼女。
その様子を見ていて、やはり私は抵抗を感じてしまう。
どうして職場に連れてくるの?そういうのは外でやってよ。
あーヤダヤダ。嫌なオバサンになってしまったと自分でも思う。
上手に会話出来ない私にくらべ、誰とても楽しく会話出来る彼女の方がずっと大人なのかも。
自分が若い頃、40歳を超えたベテランOLの中には、怖い人だったり、無表情で近寄り難い人がたくさんいた。
でも、自分が今そうなって思う。
みんなただ不器用なだけだったのかもって。
オバサンって案外しんどい。
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