無神経
実家の母から電話があった。
「優子ちゃん最近体調悪いんだって。聞いてる?」
優子というのは私の幼馴染だ。
20代半ばまでは時々優子と会う事もあったが、彼女に子供が出来た頃から何年も会っていない。
考えてみれば優子に限らず、過去に付き合いがあった人と疎遠になったのは、皆が母になった時期が多いように思う。出産、子育ての事で頭がいっぱいの彼女達と、前に進めない私。一緒にいて話が合うはずもなく、気まずい空気が流れた。
「もう何年も会っていないから」
私がそう答えると、母は
「なんだか優子ちゃん、最近気分が落ち込んでいるらしいわよ」
「……ふ~ん」
母同士のネットワーク情報だろう。嫌な予感がした。
「ころり、電話してあげたら?」
やっぱり。母はそれが言いたくて電話をかけてきたのだ。もう何年も付き合いがないと言っているのにそんな事はお構いなし。母はすぐに誰かと私の繋がりを作ろうとする。
「ずっと会っていないのに、急に迷惑でしょ」と私は言った。
すると母は「そんな事ないと思う」と言い、「ころりはいつでも暇だから何でも相談してあげてって言ったおいたわよ」と続けた。
私は胃がムカムカしながら母の話を黙って聞いていた。
「そしたらね、優子ちゃんが言っていたらしいの。ころりには電話しづらいって」
ズキッとした。
だが咄嗟に出た言葉が「どうして?」だった。理由なんて聞きたくもないし想像出来ているのに。
だが母は「さぁ……分からないけど、遠慮しているんでしょ。だからこちらから電話してあげるべきだと思うのよ」と言った。
母の無神経さが重い。
相手が「電話しづらい」とまで言っているのに、こちらから電話しろという無神経さ。
相手が「電話しづらい」と思っている事を私に平気で伝える無神経さ。
私は投げやりな気分で言った。
「私だって電話しづらいわ」
本心だ。
すると母は「そう……じゃあ今度優子ちゃんにもころりがそう言ってるって伝えておくわね」と言って電話を切った。
放っておいて欲しいのに。母により人間関係がかき乱される。
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