心と体





心臓がバクバクしていた。

誰かに何かを話さなければならない、そう思うだけでこんな状態になる。
心療内科に来ておきながら医師と話す事をプレッシャーに感じるなんて、心にいらぬ負担をかけている様で早速後悔していた。

 *  *  *  *  *  * 

ようやく重い腰を上げて心療内科に行った。
安定剤が残り少なくなったのと、医師に何か話す事でもしかしたら少しは心が軽くなるかもしれないという微かな期待もあったから。

最近では安定剤を服用しない日の方が少なく、更に心だけでなく体の方も調子が悪かった。食事がなかなか喉を通らず、腹が空かない。無理に食べようとしても吐き気がしたり胃腸の調子が良くなかった。

心療内科に行く前に胃腸科を受診したのだが、そこの医師にズバリ言われた。

「胃は精神との関係が大きいから自律神経を整えた方がいいですよ」と。

まさか胃腸科に行って「自律神経」の話になるとは思ってもいなかった。私の事を何も知らない胃腸科の医師まで、私を一目見ただけで精神が病んでいると分かるのだろうか?と、それだけで落ち込んだ。

結局胃腸科で自律神経を整える薬を貰い、まるで「あなたの行くべき場所は心療内科です」と言われている気分になった。


以前から心療内科の待合が苦手だ。
今から自分の気持ちや状況を説明しなくてはいけないと思うと胸が苦しくなる。上手く話せないのでは?という不安に襲われる。その為にこの場所に来ているのだから気にしなくていいのは頭では分かっているが心が言う事を聞かない。


しばらく待ち、やっと私の名前が呼ばれた。
思い切って診察室に入ると懐かしい笑顔がそこにあった。

「お久しぶりですね、ころりさん」

「ご無沙汰しています」

「お久しぶりってのはいい事なんですけどね、アハハ」と、以前と変わらず少し顔を赤らめて笑うその医師を見て、「変わらないなぁ……」と私は少しずつ自分の心が落ち着いていくのを感じた。

意図してかどうかは分からないが、この医師はあまり堂々としていない。
変な言い方だが、どちらかと言えば「こちら側の人」と感じる。なのであれ程待合では緊張していた私だが、この医師と話しているとなぜか「大丈夫」という気持ちになれた。

最近の心と体の不調や、時々仕事に行っている事などを話した。
良い医師だとは思うが、私は以前から心療内科で悩みや心の傷をさらけ出す事はほとんどない。優しい言葉をかけて頂き思わず涙が出そうになる事はあるが、「だめだ!しっかりしろ!」と自分に言い聞かせて冷静さを保つようにする。

そんな壁のある私の数少ない言葉から、医師は何かを読み取ってくれるのか、この日もニコニコしながら私の話を聞いた後、

「無理はしなくていいんですよ」と言った。
「辛いときは誰だってありますから。立ち止まっても誰にも責められる事はないんですから」と続けた。

え?私は辛いなんて一言も言わなかったのに、顔にそれが出ていたのだろうか?
だけど今の私には医師の言葉が一つ一つ心に染みた。
そうですね、分かっているんです、でも自分を許せないんです、私はそう心で呟いた。

次の予約は決めなかった。
医師は「またいつでも来て下さいね」と言った後、「あ、来ないで済む方がいいんだけど、アハハ」と最初と同じ事を言い、再び顔を赤らめた。

こんな人が親だったら良かったのに。どれ程気持ちが楽になるだろう。




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Posted byころり