愛情不足





夜、夫が帰宅すると愛犬はこれ以上ない笑顔で出迎える。

嬉しくて小さな家の中をグルグルと駆け回り、最後には夫の膝に飛び乗り甘えた声を出す。

また犬というのは不思議な事に、飼い主が仕事で出掛けるのか、別の用事で出掛けるのかを空気で察する。日々の生活リズムを把握している為、少しでも違う行動をすると気付く。

なので夫が仕事以外の用事で家を出ようとすると、その直前から夫の膝に飛び乗り離れない。玄関に行こうとしても足元で「キュンキュン」と寂しそうに鳴く。
そして帰宅するまでずっと玄関の方向を見つめ、永遠に待ち続ける。私が傍にいようが関係ない。

愛犬はとにかく夫の事が大好きなのだ。その様子は忠犬ハチ公そのもの。

その関係を傍で見ているのが私は嬉しい。微笑ましく、温かな気持ちになる。

だが最近ふと思った。
なぜ私の時は違うのだろう?と。

私が帰宅しても愛犬は夫の時の様に大騒ぎはしない。玄関には迎に来てくれるが、静かにそこで座っている。
私の膝に飛び乗り離れないというような事もない。夫と比較すると愛犬が私に甘える事が少ない様に感じるのだ。


「あなたの方が懐かれているわね」と夫に言うと、「それはころりがほとんど家にいるから安心しているんだろ」と言った。

だが私はそれだけではない気がする。

今まで私は夫の様に、愛犬に対して明るく元気な愛情表現をしてこなかった。
夫は愛犬と一緒に走り回ったり、大声で愛犬のテンションを上げて飛び回る。その時の愛犬の表情といえばそれはもう甘えた子供そのもの。
だが一方私の方は、愛犬をソッと撫でる、ギュッと抱きしめる、時にはシクシク泣いていると愛犬の方から寄り添ってきて、逆に慰めて貰っている立場だ。
愛犬からすれば私はきっと鬱陶しくて手のかかる飼い主なんだろうな、と思うと苦笑してしまう。

私が愛犬に甘え、愛犬は夫に甘える、そんな構図がいつの間にか出来上がっていた。

この愛犬の様子を見ていると、もし私に子供がいたらきっと同じ状況になっていたんじゃないかと想像する。
夫はきっといい父親になっていただろう。それは私が自信を持って言える。
だが私はきっと子供に気を遣わせる親になっていただろうと思う。私が母に気を遣って育ってきたように。アダルトチルドレンの連鎖。

何も考えずに真っ直ぐな愛情を注げる夫が羨ましい。私は愛犬にさえ気を遣わせている様な気がする。
だが楽しそうな夫と愛犬の様子を傍で見ている、そんな距離感が私には合っている様な気もする。真っ直ぐ私にだけに愛情を向けられたら、それを無くした時に立ち直れない気がするから。人との関係だけでなく、ペットとの関係まで複雑にしてしまう私。

ソファに座ると愛犬が私の隣で眠り始めた。
その温かさを感じながら「愛情不足でごめんね」と、愛犬の背中をそっと撫でた。




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Posted byころり
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