仮面同士





散歩していると久々の顔に会った。近所に住む鬱病の女性だ。

お互い「あなた鬱ですよね?」と確認し合った訳ではないが、何度か会話しているうちに、そうだろうという事は何となく分かる。
挨拶や軽い世間話をする程度の関係だったが、しばらく彼女の顔を見かけなかった。
少し前に彼女の親と会った時、「入院している」と言っていたので、かなり悪いのだろうと察した。

なのでもしかしたらもう会う事はないかもしれない……と思っていたが、前方から歩いて来たのはまさにその人だった。

「お久しぶりです」とあちらから声をかけてくれた。

「あ、お久しぶりです」と返すと、彼女の方から「実は入院していたんです」と話し始めた。「今回の入院は長かったんですよ」と、昨年から半年程入院生活だったと言う。

そしてその入院生活がどれ程楽しかったのか嬉しそうな顔をして話す。
「先生も看護師さん達もすごく良い人でね、同室の人とも友達みたいになって案外楽しかったんですよ。入院が楽しいって変ですけどね」と言い、笑った。

私も笑い、「そうですか、良かったですね」と話を合わす。
でも内心は彼女の無理した笑顔が見ていて痛いと思った。

彼女は以前から「私は幸せだ」「私は平気だ」という様な話しをする。
他人から鬱で大変そうだとか、可哀想だと思われたくないのかもしれない。他人事ではないので気持ちが分かる。





彼女と会うと自分の写し鏡を見ているような気分になる。
私は他人から見たら彼女のような感じなのかな?と。
元気そうに見せようと必死で、会話が途切れるのが怖くて早口で次々と言葉を続ける。だけどその無理した自分が辛くて早々にその場を立ち去ろうとする。まるで私そのものだ。

だけど今自分の気持ちが落ちているからか、彼女と会話するのがとても楽だと感じた。
正直、彼女と話していても何も楽しくはない。
多分それは彼女は仮面を被り、素の自分を見せていないから。上っ面の会話はどこまで続けても何も心に響かない。

それでも話していて楽だと思った。

「この人は私を傷つける事はない」と分かるから。

もしかしたらあちらもそう思っているのではないか?
だから私達は会えば表面的に会話をし、それ以上相手に入り込まない。

人付き合いにおいて、ぶつかり合ったり心をさらけ出すからこそ、その分親しくなれると思う。仮面を被った人と親しくなれるはずがない。

だから私とその女性はこの先も仮面を被った者同士、永遠にこれ以上近い関係になる事はないだろう。
ずっと親しい友人が欲しいと思い続けているがその反面、彼女の様に私の心に踏み込んでこない人の方が楽だと感じる自分がいる。




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Posted byころり
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